繊維学部研究紹介
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教員紹介有機分子には、鏡像関係にあるいわゆる左手右手系分子が存在する場合があります。鏡像関係にあるため、それらの化学的、物理的性質はほとんど同じですが、生体にとっては異なる分子であるため、特に医薬品開発においてそれらを区別して合成することが重要になります。当研究室では,それら左手右手系分子の一方を選択的に合成するための不斉触媒の開発を中心テーマとして研究を行っています。新しい触媒の創出には触媒をいかにデザインするかが重要ですが、希少金属を用いない、簡便に合成可能、高選択的高活性をキーワードにした新規な触媒創出を目指しています。有機合成化学は、新しい材料や医薬品を開発する上で必要不可欠な技術であり、新しい反応、触媒の創出は、有用物質の効率的合成のため重要です。当研究室では、有機合成において重要な炭素-炭素結合形成反応の他、基本反応であるエステル化反応を触媒する不斉触媒の開発を行っています。不斉エステル化反応によりバイオマスであるグリセリンの機能化、光学活性アルコール、アミンの簡便供給が期待されます。有機合成化学は、実際に有機分子に触れ、その反応性、物性を体感する研究分野であるため、有機化合物が関係する広い分野での活躍が可能です。製薬関係のほか、低分子、高分子製品製造メーカーに卒業生を輩出しています。藤本哲也准教授信州大学大学院工学系研究科機能高分子学専攻修了。研究分野:有機合成化学。特に有機合成における新規手法、新規触媒の開発。実験室風景。様々な試薬や溶媒、ガラス器具を使い目的とする有機化合物を合成していく。生成物の構造はNMRなどで確認するサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm原子の性質に基づき設計された不斉エステル化触媒とその反応。ジオール中の2つの等価な水酸基を区別してエステル化が進行する研究から広がる未来卒業後の未来像NNOPh2PCatalystRROHOHCatalystC6H5COCl, i -Pr2EtNRROCOC6H5OHUp to 94 % ee18214151617He678910CNOFNe1415161718SiPSClAr33343536AsSeBrKr化学・材料学科精密有機合成を可能にする―原子の特性に基づく高選択的有機分子触媒41教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科バイオマス資源の有効利用で持続可能社会の実現を目指す油脂や木材、微細藻類などの様々なバイオマスは光合成により大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長します。そのため、バイオマス由来の燃料は燃焼しても大気中の二酸化炭素を増加させず、カーボンニュートラルなエネルギー源として期待されています。しかし、バイオマス資源のエネルギー利用実現のためには、物質やエネルギーの転換技術の高効率化が不可欠です。当研究室では、バイオマス資源を安価なプロセスを用いて高品位な燃料や化学品原料に効率的に転換することを目指し、触媒反応機構の解明や新規触媒の設計に取り組んでいます。化学工学はものづくりの現場で役に立つ実学であり、活躍できる分野は化学、エネルギー、材料、プラントエンジニアリングなど多岐にわたります。当研究室では、化学工学や反応工学の知識の習得はもちろん、その知識をどのように活用するのかを研究を通じて身に着けてもらいたいと考えています。嶋田五百里講師2013年に東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了し、博士号(環境学)を取得。日本学術振興会特別研究員、信州大学繊維学部助教を経て、2018年より現職。専門は化学工学、反応工学。バイオマス資源のエネルギー・化学原料利用。触媒反応による効率的な物質転換技術が実用化の鍵となる。触媒反応試験の様子。大きな装置に見えるが、これでも"小型反応試験装置"。研究に必要な実験装置は自分達で作ることも多い。(上)反応に用いる固体触媒。(下)微細藻類が生産した油脂を原料に用いた触媒反応生成物。ガソリン代替燃料として利用できる。再生可能エネルギーであるバイオマス資源を用いたエネルギーシステムの構築により、化石燃料などの枯渇性資源に頼らないクリーンで持続可能なエネルギー社会の構築を目指します。さらには、バイオマスから様々な有用物質への転換手法を構築することで、現在は石油資源から生産されている多くの化学製品の代替も可能となります。輸送用燃料・化学品原料バイオマス資源CO2光合成固定化触媒反応による物質転換

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