繊維学部研究紹介
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教員紹介ペットボトル等に代表される合成樹脂の高分子膜には、実は非常に細かい隙間が空いています。と言っても、液体は通さずにわずかな気体を通す隙間ですが。この気体の通りにくさ(バリア性)を100万倍ほど高めて、電子材料向けのバリア材ができないかという研究を進めているのが平田研究室。実現すれば、液晶テレビや携帯電話の画面がガラスからプラスチックに切り替わり、価格を抑えることまで可能になります。またガラスよりも薄く、軽く、柔らかいため、破損する可能性も低くなるほか持ち運びも便利になるので用途も格段に広がるという、いま注目の研究分野なのです。バリア性を高め何も通さない高分子膜を開発する一方で、「特定の物質だけを通す」高分子も研究中。この特性を活用すれば、大気から酸素のみを取り出したり、海水を真水に変えるといったことも可能に。人工透析など医療の現場での利用も考えられています。またこの技術は私たちの生活に直接生かせるものだけでなく、研究者が実験を行う際にも非常に役立つ技術でもあり、多くの開発にひと役かっているのです。主に化学系メーカーなどへの就職が多い平田研究室。一方、高分子や膜の製作から評価に至る一連の過程を体験することで、物事を広く見る目を養えることから、業界を超えた幅広い研究分野で卒業生が活躍しています。平田雄一准教授明治大学理工学部専任講師、フランス国立農業研究所博士研究員、信州大学繊維学部助手等を経て、2010年より現職。主な研究分野はバリアフィルムや分離膜、染色化学等。研究から広がる未来卒業後の未来像左が塩水、右が真水で、間にあるフィルムを通して塩分がどれだけ真水側に移動するのかを、塩分濃度計で測定するサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm酢酸セルロースをアンモニアで煮て、高分子の変化を探るサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cm界面活性剤による膜の作製も学生が取り組んでいるサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm化学・材料学科ペットボトルを水が通り抜ける!?そんな高分子膜の謎を紐解く教員紹介福長博准教授信州大学繊維学部助手を経て、2009年より現職。主な研究分野は、固体酸化物形燃料電池や固体高分子形燃料電池を対象とした化学工学と電気化学。固体酸化物形燃料電池の発電装置研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科燃料電池で環境・エネルギー問題を解決する40燃料電池は、環境問題・エネルギー問題を解決するための切り札として期待されています。福長研究室では、高価な白金を、大幅に減らした固体高分子形燃料電池の開発に取り組んでいます。その一つは、厚みが数原子しかないナノシート触媒で、もう一つは、核となる金属の周りをPtで囲んだコアシェル触媒です。また、シルクを原料としたPtを用いない材料も開発しています。新しい触媒を実際の電池に組み込むには、いずれも、電極の中のガスやイオン・電子の移動が重要で、新規材料の開発とともに、電極構造の最適化に取り組んでいます。Ptナノシート触媒を用いた新規な固体高分子形燃料電池の電極燃料電池は、水素社会を実現するためには、欠かすことの出来ない技術です。発電所、家庭用コジェネレーション、自動車の動力、携帯機器の電源、人工臓器の動力など用途は広がっていきます。しかし、普及には低コスト化が欠かせません。電極の白金を低減・代替することができれば、燃料電池はどんどん身近に使われるでしょう。化学工学を活かせる分野は多く、卒業後の就職先としては、化学、電気・電子、自動車、エネルギー関連など幅広いです。

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