繊維学部研究紹介
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教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科光触媒反応システムの開発クリーンな有機反応から人工光合成へ光エネルギーを駆動力として、光化学合成や水質浄化のための光触媒と反応装置を研究しています。目的反応に適した光触媒/助触媒の探索のため、Langmuir-Blodgett膜(LB膜)製造装置を用いてナノ階層構造を制御し、分子間力顕微鏡や導波路分光装置などで評価します。開発した光触媒を大量合成反応に応用するため、光触媒への導光性と原料の輸送効率を高めた光化学反応器を開発しました。この光化学反応システムをベンゼン等の部分酸化反応、太陽光を利用する水質浄化、光触媒消臭ウエアに応用し、さらに、水とCO2から化学原料を合成する人工光合成システムへの展開を検討しています。研究を通して、化学の知識を問題解決に生かす力、必要に応じて新領域を学び続ける力を身に着けるので、卒業生は、化学、電子や機械など広い分野で活躍しています。宇佐美久尚教授1992年に信州大学助手着任、助教授、准教授を経て、2012年より現職。研究分野は光化学、光触媒光触媒反抗器。水の浄化システムは植物工場にも応用。LB膜の製造過程と導波路分光装置ナノ構造を制御した光触媒を試作し、分光装置で評価する。光化学の原理に基づいて、新しい反応の仕組みを設計し、実際に効果を実験で確かめることが研究の醍醐味です。光触媒のナノ構造を最適化して活性を高め、大量合成に適した反応器と組み合わせれば、水と二酸化炭素から化学原料や燃料を合成する未来技術にも貢献できると考えています。多孔質ガラスを導光路とする光触媒反応器。反応器内壁に担持した光触媒で有害物質を分解する。レタス栽培用の浄水システムへの応用を検討している光触媒反応器。処理液原液ガラス側壁光触媒層網目状の導光路とマイクロ流路励起光LED太陽光LB膜の製造過程導波路分光装置29教員紹介市川研究室では、次世代のディスプレイや照明としての利用に期待が高まる有機EL(有機LED)の研究開発を行っています。非常に薄い上に自ら発光するなど、現在主流となっている液晶にはない多くの特性を持っています。海外の大手企業も注目し、市川研究室と協同しているこの技術。実現すれば、天井や壁全体を照明にすることや、テレビやパソコンのモニタを紙のようにクルクルと丸めて持ち運ぶ、なんてことも可能に!現在は消費電力量の削減が大きな課題ですが、SF映画にでも出てきそうな未来の生活が、有機ELによって始まろうとしています。有機ELの研究において市川先生が消費電力削減と同時に取り組んでいるのが、原料の選定。現状ではレアメタルや貴金属といった希少元素を使用することが想定されていますが、もっと容易に入手できる、炭素のような元素を原料にすることをめざしています。またこの有機ELの研究に加えて、有機半導体や有機太陽電池等の研究も活発に行われ、豊かで持続可能な社会の実現に向けて期待されています。卒業後の進路としては、素材メーカーや化学メーカー、材料メーカーに就職する学生が多いのが特徴。もちろん電機メーカーへの就職もあります。また有機ELの開発は印刷会社でも行っているため、大手印刷会社へ就職した学生もいます。市川結教授宇部興産株式会社高分子研究所研究員、信州大学繊維学部助手、准教授を経て、2013年より現職。有機半導体デバイスや有機光電子材料といった機能材料・デバイスや物理化学が研究分野。研究から広がる未来卒業後の未来像これが有機EL。導電性高分子である有機ELはLEDと違い、薄い膜のような形状で発光する点がポイントだ研究室で開発した有機半導体材料を溶剤に溶かし基板に塗り、トランジスタが完成。特性を生かした活用例を生み出す研究を行う化学・材料学科丸めて運べるTV、照明になる天井…空想上の未来を有機ELが叶えてくれる

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