繊維学部研究紹介
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教員紹介生物にとって水や空気などの流体はとても大切であり、生物と流体は密接な関係にあります。その中で、小林研究室は「生物の遊泳」と「血流」について取り組んでいます。「生物の遊泳」では、生物の巧みな遊泳を詳細に調べてロボット化に有効なメカニズムは何かを発見し、新しいロボットを創成しています。また、「血流」では、心筋梗塞や脳梗塞の原因でもあるアテローム性動脈硬化症について、動脈硬化斑(プラーク)の破綻メカニズムを、模擬血管を使った実験とコンピュータを用いた数値計算によって検討しています。水棲生物は様々な環境で生息しています。その生物のメカニズムを応用することで、従来のロボットでは難しい、泥の中や、大震災後に問題となった海藻・ロープ・瓦礫が沢山ある海中など、厳しい環境で作業するロボットの実現に寄与するでしょう。また、血流の研究では、患者毎のMRIなどによる医用画像から、動脈硬化斑の脆弱度を即座に数値化する診断支援システムとして発展できるでしょう。研究の関係から、医療機器の企業に就職する学生もいますが、多くは精密機械・自動車・電機・情報通信など、多岐にわたる企業に就職しています。もちろん、公務員になったり教育研究機関の研究者への道を歩む学生もいます。小林俊一教授信州大学繊維学部講師、助教授、准教授を経て2009年から現職。1996-1997年、ジョージア工科大の研究員の時に血流の研究をスタート。現在も国際共同研究として取り組んでいる。研究から広がる未来卒業後の未来像ゴカイの泳ぎを調べて開発した全方向遊泳が可能なロボットアテローム性動脈硬化症のモデル実験と数値計算魚の尾びれのしなやかな動きに注目したフィン。フィンの剛性をリアルタイムで変化させ、推進性能の向上をはかる機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコースバイオと流体で、ロボット開発と医療に取り組む24教員紹介私の研究室では、「人間」、「非侵襲」、「バイオセンサ」を研究のキーワードとして、だ液分析による生体計測という新しい研究分野を切り開いています。非侵襲生体計測とは、ヒトの体に傷をつけることなく様々な情報を取り出し、健康の維持や病気の診断・治療に利用するための技術です。また、生体の優れた機能を模倣することで(バイオミメティクス)、物質表面の撥水性や親水性を物理的に制御する技術や,機械強度に優れた3次元樹脂成形物の試作を行う「3Dプリンタ」の研究を行っています。渋滞する自動車、店頭に山積みされた食品、地震で揺れるビル等では、様々な量が時間とともに変化し続けています。自然や人工物だけでなく、人の体も情報を発信していて、呼吸数や表情の変化だけでなく、唾液中のマーカーとして表に現れます。これらの生体情報を、科学的な見地に基づいてしなやかに統合することで、心身ストレスを可視化しようとする試みが活発化しています。将来は、病気の超早期診断や予防医療技術に繋がると考えられます。卒業生は,医療機器メーカーや製薬メーカーといった企業はもちろん、製品が人とかかわりの強い自動車メーカー、食品メーカー等で活躍しています。「人間を科学する」能力や専門性は、これからの新しい社会へ貢献できることでしょう。山口昌樹教授信州大学を卒業後、ブラザー工業㈱,東京農工大学助手、富山大学助教授、岩手大学教授を経て2015年より現職。研究分野は生体医工学、バイオミメティクス,ストレス科学。研究から広がる未来卒業後の未来像だ液を分析して人の心身ストレス度合を可視化するセンサハスの葉の撥水性(左)を人工的に作り出した表面(右) 機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース生体は情報を発信する

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