繊維学部研究紹介
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教員紹介鮑研究室は、繊維学部だけでなく日本でも唯一の繊維応用力学研究室です。高強度かつ軽量の工業材料を求める時代の要望に応じて、歴代の教授(篠原先生、剣持先生)による研究と教育を通じて、今日までに発展しました。現在、繊維の力学特性を研究の出発点とし、リサイクルしやすく高比強度・多機能性を持つ最適な繊維構造体および繊維強化複合体(FRP,FRTP)の開発と研究を行っています。高比強度かつエロージョンに強い繊維強化複合材料や低コストかつ高回収率のFRPのリサイクル法の開発などに成功しています。主に車や航空機メーカーなどへの就職が多数で、研究室の研究を生かし、新構造材料の利用と開発など、国内外で幅広く活躍しています。鮑力民教授信州大学繊維学部助手、講師、准教授を経て、2013年より現職。研究分野は、繊維応用力学、カーボン繊維やスーパー繊維を利用したFRPなどを開発している複合材料工学。研究から広がる未来卒業後の未来像衝撃特性スーパー繊維とカーボン繊維のハイブリッドによる、緩衝特性と衝撃強度が共に優れたFRP構造の開発竹の節を模倣した強化ウエブ構造を持つ高剛性かつ超軽量FRP構造の開発と研究複合材料の応用は今拡大しています。最近開発されたボーイング787航空機は胴体や翼など重量の90%近くをCFRPが占めるほどになってきました。また車や風車などの分野へのFRPの進出は加速化しています。より強く、より軽く、よりリサイクルしやすい複合材料構造の実現は環境にやさしく、資源の保護にも繋がります。そのほかに研究室では次世代の自己診断・自己修復性能を持つスマート複合材料の研究も行っています。機械・ロボット学科機能機械学コースより強く、より軽く、よりリサイクルしやすい複合材料構造を目指す写真サイズ高さ4.35cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm学科名等はこちらで入力いたします当研究室の軸足は「機械的な柔らかさが生み出す知能的な振る舞い」にあります。生き物は高次なものから原初的な種まで、筋肉、腱、皮膚組織など3次元的に柔らかい素材で作り上げられています。この柔らかい体を制御するには、必ずしも膨大なニューロンが必要というわけではないようです。例えばイモムシやアメーバなどの原初的な生物は、非常に少ない神経組織や生化学反応などの分散された情報処理系で、ほぼ無限大ともいえる自由度を制御します。当研究室は「機械的な柔らかさ」が機械と生物の本質的な違いであると捉え、これら原初的な生物からヒントを得ながら、機械的な柔らかさによりはじめて実現できる知能を備えた実世界で活躍できるロボット作りを研究しています。繊維やゴム状素材を多用したロボットの設計はソフトロボティクスと呼ばれ、近年特に成長目覚ましい分野です。●人の生活環境や自然環境で使うためのロボットの実現:例えば、電線をモニタリングするためのイモムシ型ロボットや、土の中をモニタリングするためのミミズロボットなどの実現。●ラピットプロトタイピングによる低価格かつ汎用的なソフト・ロボットの設計論の構築。●組み立てコストや配線の手間などの激減により、今までは考えられないほどの複雑で有機的なデザインを持ったロボットを提案するような新しい学術・産業領域の創生。●生物システムをさらに理解するためのプラットフォームとしてロボットを活用するRobotic-inspired Biologyの普及:ロボットではパラメータ変更が自由であるため、あり得たかも知れない生物(life as it could be) の設計。当研究室は、2019年11月に立ち上がったばかりで、まだ卒業生はいませんが、当研究室での研究活動を通じて、アルゴリズミックな機械設計(プログラムを使った形の自動生成)、3Dプリンタなどのデジタリファブリケーション技術を使っての製造、制御工学、ロボットの設計を通じてのシステム思考など、自動車産業や情報系の企業など幅広い分野で求められるスキルセットを身につけることができます。3Dプリントで造形したイモムシロボット。曲げ変形だけでなく圧縮変形も使うことで、より速い這行(しゃこう) 運動と多様な振る舞いを実現。磁界共振型無線給電で駆動するイモムシロボ導電性インクで印刷したセンサ兼アクチュエータ梅舘拓也准教授東北大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。米国Tufts大学にて日本学術振興会特別研究員員(PD)、海外特別研究員を務め、東京大学大学院情報理工学系研究科特任講師を経て現職。機械・ロボット学科機能機械学コース教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像繊維やゴム状の柔軟素材を駆使し、生物のようにしぶとく動くロボットを創る21

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