繊維学部研究紹介
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教員紹介「ハッ」と目が覚めるような黒のスーツを身にまといゴージャスな大人の雰囲気を感じたい。お風呂上がりには「マシュマロ」みたいな肌触りのルームウェアに包まれていたい。金井研究室ではそんな消費者の素直な要求を満たす「幸せのためのもの創り」を実践しています。何本もの細い繊維を束ねて糸を創り、それを経緯に組み合わせて創られた布はテキスタイルと呼ばれ、フィルムや紙と比べてしなやかで強く、軽くて空気をたくさん含む魅力的な素材です。このテキスタイルを消費者の要求に合わせて効率よく創りあげる方法を研究しています。ユーザフレンドリを満足させるものづくりの方法論を実現するためには、人間の心理、生理反応を計測し数値化して、消費者のニーズを正確に把握することから始めます。まさに「ヒトを測ってそのヒトを知る」のです。この技術を応用すれば、宇宙飛行士や消防士など危険な作業をともなうヒトの状態を知ったり、心地よい香りをかぐことでどのくらいリラックス効果が得られたかを知ることもできるのです。ユーザーフレンドリを満足させる技術は、繊維製品に限らず身の回りのあらゆる製品(車、インテリア、文房具など)で求められています。「心躍る製品を創ってユーザーを感動させたい」という夢を持っている人が社会で活躍できる学問です。金井博幸准教授信州大学繊維学部を卒業後2003年より繊維学部助手、2007年より助教、2009年より講師、2011年より現職。研究分野は感覚計測工学、生体機能計測工学。布の光反射を測定してヒトが感じる「深み」や「艶やかさ」などの印象を数値化できる装置。布の美しさを数字で評価できるスーツを着たヒトの筋肉の活動(筋電図)を測ることで、そのスーツがどれだけ動きやすいかを知ることができる写真サイズ高さ2.65cm×幅3cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm研究から広がる未来卒業後の未来像先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース五感を科学して製品の付加価値を向上10教員紹介繊維工学とテキスタイルサイエンスの面から「せんい」に取り組んでいます。繊維工学の面からは、繊維機械やシステムについて検討しています。テキスタイルサイエンスとしては、せんいに潜んでいる法則を見つけていきたいと思っています。人類は古代は石器・土器を、やがて金属や合成樹脂、ついには原子力燃料を製造するところまで来ています。しかし、その間ずっと使われてきたものとして「せんい」があります。なぜ衣服は「せんい」でなければならないのか?これは、大変不思議で、面白く、また挑戦し甲斐がある謎であると思います。昔は大小さまざまな印刷屋さんがあって、それはなくてはならないものでしたが、パーソナルコンピュータとプリンタは印刷の世界を全く変えてしまいました。印刷業は大きく変わりましたが、誰もが自宅で様々な印刷物を作り出せるほど、印刷の文化は大きく発展しています。業界の成長と文化の向上は等しくないのです。このことは「せんい」の世界にも起こる、あるいは起きなければならないのかもしれません。同じ力のエンジンを積んでいてもレーシングカーとブルドーザーでは得意な仕事は全く違います。どちらが優れているかとか考えるのは無意味です。みんなが互いに得意なところで力を合わせるのが必要と考えます。坂口明男准教授長野県上田市生まれ。信州大学繊維学部卒。信州大学大学院繊維工学専攻中退。信州大学繊維学部教務員、同助手を経て現職。現在の専門は繊維工学。研究から広がる未来卒業後の未来像真綿から手作りされる紬糸にも法則があるウェブ中の繊維の形を測る先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース「せんい」-日本における、このキーワードの未来を考える

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