06離れて『型』を生む「種発利」サイクル守って「型」に付き破って『型』に出てで産みだす信州大学の価値創造素になっていますが、その取り組みの展望はいかがですか? もちろん継続して注力して行きます。これまでの信州大学の地域貢献の取り組みを統括するユニバーシティ・エンゲージメント室(UEO)が本格稼働します。ここを中心に、信州アカデミア構想、信州リビング・ラボ構想、信州100年企業創出プログラム、信州大学連携コーディネーター制度、教育学部附属学校園を活用した「明日の信州教育を担う実践的指導力・課題解決能力を有する教員養成」等の事業をさらに発展させます。 産学官・社会連携の推進については、信州みらい産業共創会、信州メディカル産業振興会、AREC・Fiiプラザなど、産学官連携コンソーシアムとの連携を強化し、また、環境マインド推進センターや信州ESDコンソーシアム(持続可能な社会づくりの担い手を育む教育)の活動をさらに充実させるなど「地域貢献度の高い大学」「環境にやさしい大学」のブランドを不動のものにしたいと思います。 また、信州大学医学部附属病院は、日常的な医療行為に加え、「高度先進医療」と「高度な救急医療」を地域に提供しており、地域に対する貢献度はずば抜けています。この重責を担いつつ、さらに患者さん中心の開かれた病院として、安全で先進的な医療と人間性豊かで優秀な高度医療を担う人材を地域に提供する機能を強化します。インタビュアー株式会社産直新聞社 代表取締役 毛賀澤 明宏 氏PROFILE フリーライター、伊那毎日新聞社記者を経て、2011年12月、株式会社産直新聞社を設立。2008年より信州大学広報誌『信大NOW』のライティングを請け負う。2010年に農林水産省「地産地消の仕事人」に認定。各地で地域振興のプロデュース、講演、各種セミナー運営などを行っている。2012年に情報誌『産直コペル』を発刊し、農業・6次産業化に関わる情報を全国に発信。2021年長野県より地域食農連携プロジェクト(LFP)事務局を受託し、食・農・流通事業者をつなげる役割を担う。生にも学内の各種委員会の構成メンバーに加わっていただきます。特に学生の積極的なコミットメントを前に進めたいと考えています。具体的には、IRや学務系業務など学内で働く機会を増やし教職学協働を実現します。新たに設置した学長の諮問機関である「学長・プロボスト会議」には学生も加わって頂くことになっています。 経営感覚と国際通用性を身につけた卒業生/修了生を継続的に世に送り出すことが、本学を力強く未来へと駆動させる原動力となるはずです。まさに「信大フィロソフィー」を共有して前に進みたいと思います。 コロナ禍によって、大学職員にとってもテレワークが当たり前の時代になりました。この機会を利用して、本学の全業務を洗い直し、デジタル技術による業務改善を進めるべきだと思います。AIを活用したデジタルレイバーの積極導入で、教職員の負担の軽減を図ること、また、男女共同参画社会の実現に向けて、女性管理職比率20%を達成すること、そして「公平で透明性が高い職場」「ひたむきに誠実に働いた者が正当に評価される職場」を実現することなどが喫緊の課題だと思います。 さて、先にも述べたような「信州という地域をその中心で支える信州大学」へと脱皮するためには、地域社会からの投資を受けることが極めて重要で、大きな戦略的な意味を持つことになると思います。企業・社会から大学が先行投資を受けるということは、大学が地域に対する恩返しを約束する、大学から社会への先行投資でもあるわけです。本学が目指す包摂性と持続可能性を両立させた未来社会づくりの中心となる手法と考えています。離」という言葉があります。教えるものと教えられるもの、つまり師弟の関係の在り方を示すものとされたり、修行の過程の在り方に関する教えとされたりしています。 私は学長に就任し、皆さんのお力を借りながら、信州大学を未来に向けて牽引していかなければならない立場に立った今、この「守・破・離」の考え方を大切にしようと思っています。 「守」は師の教えや流派に伝わる型や技を忠実に守って身につける段階。「破」は他の流派や他の師から別の型や技を学び、良い物は取り入れて心と技を発展させる段階。そして「離」は元々の師や流派を離れて、独自の形を産み出し、それを確立する段階です。 農業の場面で言い換えれば、「種・発・利」。「種」は畑を耕し、種を撒く耕起・播種の段階。「発」は、芽が出て花が咲く育成・開花の段階。「利」は、それまでの努力が実って、次世代に生命をつなぐ種ができる結実・次代種の段階−というように例えられるかもしれません。 今まで信州大学を築き上げてこられた先輩諸氏の営為を学び、「守って『型』に付き」、大学理念や“VISION2030”等に沿った確実な大学運営を進めます。その後に、「破って『型』を出て」、慣習や既得権にとらわれない経営イノベーションを進めます。最後は「離れて『型』を生む」、「信大ブランド」を確立して独自の形を産み出し、信州大学の持続可能性を高めます。−そのような段階プロセスを踏んで、信州大学を活力に満ちた最高水準の教育研究拠点へと築き上げていくために努力してまいります。 皆さま、何卒よろしくお願い申し上げます。離(利)結実・次代種守(種)耕起・播種破(発)育成・開花相互信頼を基軸にした「運営」と未来を見据えた「経営」―大学経営について課題はどういったところでしょうか? 大学経営に関しては、大学の構成員全てが、大学経営を「自分ごと」として捉え、「教員、職員及び学生の、教職学協働による、教員、職員及び学生のための大学経営」を目指したいと思います。職員や学守(種)・破(発)・離(利)サイクルでの駆動・発展を目指して―ニューノーマルの社会における信州大学の新しい発展の理念・ビジョンと具体的について縷々お話を聞いてきました。最後に、この新たな挑戦を始めるにあたっての心構えを話していただけますか? 日本の武道や芸道において、「守・破・
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