03YieldmutualUnderstanding地域の大学が果たすべき五つの機能―10月から学長として信州大学を率いておられます。アフターコロナ社会を迎え、信州大学に何が問われているとお考えでしょうか? 2010年代後半から、国立大学には、①高度で良質な人材育成拠点となること、②世界の「知」をリードするイノベーションハブになること、③世界・社会との高度で多様な頭脳循環の中心となること、④地域の中核として高度な「知」を提供すること、⑤強靭なガバナンスを形作ること、⑥多様で柔軟なネットワークを構築すること、⑦適正な規模感を模索し検討すること−などが求められてきました。 信州大学では、それに応えるべく2019年に信州大学長期ビジョン“VISION 2030”(2030年に向けた信州大学のグランドデザイン)を策定し、教育、研究、社会連携、グローバル、大学運営、医療などの各領域で目指すべきビジョンを明確にしてきたわけですが、今回のコロナ禍をきっかけに、“VISION2030”を踏まえつつも、今一度、その原点を見つめ直して、大学が果たすべき役割について熟考する時期であると考えています。―「原点を見つめ直す」とはどういうことなのでしょうか? コロナ禍に直面し、医療はもちろん政治・経済・文化・教育・社会活動・グローバルな国際交流などの領域で、都道府県単位、もしくはもっと小さな市町村とか郡とかの単位で、コミュニティの力が試されました。そして、地方大学はそのコミュニティに対してどのような役割を果たしているのかが問われました。アフターコロナ社会ではますますその傾向が強まると考えています。 地方大学、つまり地域の大学には、①学びの機能(Learning)、②寄り添う機能(mutual Understanding)、③つなぐ機能(Connecting)、④知の拠点機能(Knowledge)、⑤産みだす機能(Yield)の5つの機能を果たすことが求められています。この頭文字をとれば“LUCKY”になるわけですが、この“LUCKY”の機能を十分に果たすことが、地方大学の地域に対する社会的責任(USR:University Social Responsibility)であると言えるでしょう。 信州大学は、郷土である長野県に対して、これまで以上にこうした社会的責任を果たしていかなければいけない。信州の持続可能で包括的なコミュニティの実現は、信州大学が地域の中心になり、地域の発展を本気で担うことによって可能となるのだという自覚と自負を持つことが必要だと思います。送り出してきただけでなく、社会人教育などにも積極的に取り組み、信州の「知」の拠点としての役割を果たしてきました。また、様々な社会連携も進めてきました。 これらを通じて、信州の人々に、信州大学に対する信頼感と期待感を抱いていただけるようになってきており、全国的にも、「地域貢献度の高い大学」として評価いただいています。 しかし、この評価に満足せず、これからもその地平をさらに一歩も二歩も飛躍させ、アフターコロナ時代の新しい社会の在り方として「信州モデル」をつくりたい、「それを支えたのが信州大学だ」と言っていただけるような大きな役割を担っていかなければいけないと考えます。 そのために私は、信州大学が目指す理念を明示するべきだと考えました。それが、信大フィロソフィー“inGEAR”です。 信州大学と信州大学に関わる全ての人々が目指す、理念・哲学として、これを掲げたいと思います。 inGenious,Enterprising and Ac 地域に根差しながらも世界に通用する学問を研究する大学―その理念を具現化していくビジョン、イメージなどを教えて下さい。 私はかねてより、大学のインテリジェンス(知)には、「既存のデータ(知)の積み重ねによるもの」と「無から有を産み出すことができるもの」との(独創的、進取的かつ ニューノーマル時代の大学の役割を見つめなおす地方大学が果たすべき役割・機能は“LUCKY”―信大が地域を中心で支える自負と自覚が必要[特集] President Interviewニューノーマルの時代にふさわしい信大フィロソフィー “inGEAR”独創的、進取的かつ能動的な地方創生学びLearning寄り添うつなぐConnecting産みだす知の拠点Knowledge「信大ブランド」構築を意識して、持続可能な信州大学へと発展させる、そのためのフィロソフィーの確立をめざす―“LUCKY”の5つの機能を充分に発揮するためには、何が必要なのでしょうか? まさに「信大ブランド」の力が必要です。今まで以上に信州大学の強みと特色を研ぎ澄まし、エンゲージメント力を強化していくことが求められているのです。 信州大学はこれまでも、先鋭材料、ファイバー工学、細胞・遺伝子科学、山岳科学、次世代航空宇宙システム、社会基盤システムなど、特色ある独創的な研究を進めてきました。そして、それを基礎にして教育の充実をはかり、多くの卒業生を社会にLUCKY信大フィロソフィー
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