「信大仕込」は伝統と最先端科学が融合した珠玉の酒信州大学初の日本酒誕生、ということで純米吟醸酒「信大仕込」が信大広報室から届いた。試飲して、当欄に感想を書いて欲しいという嬉しいご依頼である。私は45年前、酒のメーカーに就職し広報室に配属されて以来、20年間ウイスキーやビール、ワインなどの広報に携わった。その間、広報誌の編集長等も務め、社の先輩である作家、開高健さんや山口瞳さんはもちろん、当時酒の神様とも呼ばれた坂口謹一郎博士の担当もさせていただいた。今でも趣味は、蔵元巡りなど酒に関わるものが多いのは、きっとその影響だろう。(もともと酒好きでもあるが)さて、1時間ほど冷やして早速試飲をさせていただく。最初に米のふくよかな香りが立ち上る。心が落ち着くホッとする香りだ。期待を込めてひとくち口に含むと、土鍋で炊いた最高級の新米のような旨みが口の中に広がった。そして鼻へ抜けるエレガントな香り。うまい。試飲であることを忘れて思わずゴクリと飲み込んだ。すると、かすかな余韻を残してさーっと消えてゆく。夏の夜の大輪の打ち上げ花火のようだ。つまりキレがいい。かつてビールのCMで「コクがあるのにキレがある」という名コピーがあったが、まさにそれだ。難しいとされる「旨さ」と「爽やかさ」が両立している。ボトルの裏のラベルには、長野県原産地呼称管理制度による表示として「純米吟醸酒・原材料は飯綱町産ひとごこち90%、信濃町産ひめのもち10%、醸造地、採水地は中野市」といずれも地元の米、もち米、水から作られていることがわかる。醸造元は長野県中野市で150年の歴史を持つ丸世酒造店。一般的な醸造法である米の3段仕込みの最後に、もち米を加えた「もち米熱掛け4段仕込み」という伝統手法を守ってきた人気の酒蔵である。今回、そこに最先端の材料科学から生まれた高機能結晶「信大クリスタル」を搭載した独自の浄水器が用いられ「信大仕込」が生まれた。ここ十数年の「地酒ブーム」で各地の日本酒は地元の米、水、風土(製造環境)を生かして、格段にレベルが上がっている。そんな中で、「信大クリスタル」は酒造りに必要なマグネシウムなどのミネラル分は残し、不要な金属イオンなどを吸着するという。日本酒造りにとって理想の水を磨き上げたのだ。若き杜氏曰く、「酵母がストレスなくしっかり反応し発酵がなされている。水の特徴の出た、いい酒になった」と。まさに伝統に最先端科学が融合した結晶が誕生したのだ。早速来年の「信大仕込」を予約しよう。蔵元へも行ってみたくなった。コロナ禍で苦戦する友人のバーの仲間が作った応援Tシャツ・早く自由に飲みたいものだ。信州大学は学外の広報有識者に広報アドバイザーとして、広報活動への助言・指導など、多彩な協力をいただいています。 ⑫1976年サントリー(株)入社、広報課長、広報誌編集長等を務める。1997年、デジタルCS放送局ジャパンイメージコミュニケーションズ取締役副社長就任。その後、日本農芸化学会広報委員、東京農工大出版会編集委員、等を歴任。日本旅行作家協会会員。広報コンサルタント(元サントリー広報部)信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー氏谷 浩志勢正宗「信大仕込」13
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