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10スとで行った比較実験でも、食べさせたマウスの方がインターフェロン-γの産生量が大きく増加していました。興味深いことに、生の野沢菜よりも野沢菜漬けの方が、インターフェロン-γの産生量を増やす効果が高いことも明らかとなりました。「しかも浅漬けよりも半年以上漬けた古漬けの方が、効果が高いことが分かりました」(田中准教授)。その理由は、恐らく乳酸菌。野沢菜漬けは古漬けになるほど乳酸発酵が進みます。田中准教授は、野沢菜漬けにどのような乳酸菌が働いているのかも調査し、それらが免疫機能にどう関わっているのか、詳細なメカニズムの解明も続けています。また、ウイルス感染症抑制効果も期待できることから、インフルエンザウイルスでの試験も始まっています。「食と免疫機能の関係をより多くの人に認識してもらうには、ストーリーが大切だと考えています。野沢菜は、信州の人にとって非常に身近な野菜のひとつ。冬になると多くの家庭で野沢菜漬けが食卓にのぼります。歴史的にも文化的にも、野沢菜は十分なストーリーを持っていました。それが魅力ですよね」(田中准教授)2021年4月、田中准教授は、長野県飯田市の凍り豆腐メーカー旭松食品(株)との共同研究により、凍り豆腐(高野豆腐)に含まれるタンパク質の一種レジスタントプロテインも、インターフェロン-γの産出を増加させる効果をもつことを発見しました。凍り豆腐は豆腐を凍結乾燥させた保存食で、市場に出回る9割以上が長野県内の食品メーカーで製造されています。信州の食習慣と免疫の関係について探求を続ける田中准教授。研究の先にある目標をお聞きしました。「食品免疫学を極めながら、いずれ食品の免疫機能性を簡単にスクリーニングできるシステムを構築できたらと思っています。食べて健康になれる、疾病を予防できる、そんな食品を簡単に探すことができるシステムができたら、また新しい可能性が拓けるはずです」(田中准教授)。長寿県信州の食習慣には、まだまだ明かされていない未知の可能性が秘められているのかもしれません。伝統野菜長寿県信州の伝統食材に秘められた未知の可能性長寿と発酵食品文化、地元信州を楽しみながら探索する埋蔵“菌”探検隊各種野菜によるスクリーニング調査では葉菜類による免疫賦活効果が圧倒的に高いことが判明習慣と免疫再発見!菜漬け」。しかし、その機能性はあまり知られ術研究院 農学系)は、野沢菜に含まれる糖のる効果があることを発見しました。続ける、長寿県信州の野沢菜抽出物によるインターフェロン-γ産生誘導のメカニズム生よりも漬物の方が免疫賦活効果を高めることも明らかに。発酵に伴う乳酸菌の増加が要因インターフェロン-γ産生メカニズム生よりも漬物!野菜の可食部別によるIFN-γ生産誘導能の比較

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