ンを徹底的に取り除くため、これまで丸世酒造店では、イオン交換樹脂を使った浄水器を使用してきました。十分な浄水機能を備えたイオン交換樹脂ですが、「信大クリスタル」との最大の違いは、取り除く物質の「選択性」。酒づくりには、酵母の活動を促すため、マグネシウムなどのミネラル分が不可欠です。井戸水などを水源とする中野市の水にも多く含まれていますが、浄水器を通すことで、ほとんどが取り除かれてしまいます。一方、「信大クリスタル」は、酒造りには支障があるといわれる鉄などの金属イオンだけを吸着、酵母の活動に必要なミネラル分は水中に残すことができます。味わいの違いはわずかですが、目には見えない物質の差が、若き杜氏の舌にはこれまでとは違う「明らかな差」として現れたのです。「この土地で酒をつくり続ける限り、米や麹は変えることができても、水は選ぶことができない。だからこそ、この土地の水の良さを最大限に引き出す最先端技術を取り入れることができれば、伝統を超える酒づくりができると感じました」(関さん)2021年2月19日、朝7時。北信濃の凍てつく風が吹く日、丸世酒造店の仕込み部屋は、ものすごい湯けむりで包まれていました。この日行われていたのは、「信大クリスタル」で浄化した水を使った酒の「仕込み」。朝の静謐な空気の中、蒸しあがった酒米をタンクに入れ、水を注ぎこみ、櫂棒で混ぜ合わせます。その後、発酵を促しながら、およそ2週間寝かせます。「信大クリスタルの水に変わることで、もともと持っていた中野市の水の力がそのままストレートに表れるお酒になるはずです。これまで以上にクリアなお酒ができるのではないかと、わくわくしています」と、仕込みの工程を終えた関さんに話を聞くと、期待を込めた笑顔でそう答えてくれました。そして3月、いよいよ最後の工程である「搾り」が行われました。発酵を終えた「醪(もろみ)」を袋に詰め、板と板の間にはさみ、いくつも積み重ね、上からゆっくりとプレスしていきます。酒、水、米が混合04出会い丸世酒造店の若き杜氏で五代目を継ぐ関晋司さん蒸しあがった酒米をタンクへ「信大クリスタル」で浄化した仕込み水を入れ、櫂棒でかき混ぜる。水、米、酵母が合わさり、発酵が進む味を決める重要な「仕込み」そして「搾り」工程を経て信大初の新たなお酒誕生
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