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10果を返す診断支援サービスを構想しており、現在、医療機器としての製造販売承認の取得を目指しています。「こんな状態になる前に受診してくれていれば…と思うことが、これまでも多々ありました。かかりつけ医の先生が病変を見つけられたら早期発見につながることも多いのですが、専門医でさえ診断が難しい皮膚がんの診断能力を、内科の先生に身に付けてもらうことは現実的ではありません。AIでの診断支援システムは、その突破口となるのではないかと感じています」と皆川助教。医療過疎地や在宅診療などでは、専門医へのアクセスが容易ではありません。AIの活用が進めば、専門医以外の医師やコメディカル、または患者自身が皮膚がんの可能性がある病変を高い精度で見つけ出すことができ、最終的な専門医診断に早期の段階でつなげることができます。「AIの活用は、一見、古賀先生と皆川先生が自身で積み上げてきた経験を否定しているかのように見えるかもしれません。しかし、AIを動かすには良質なデータが不可欠。ここに大学が長年蓄積してきたノウハウがある。そこへカシオさんのノウハウが融合し、新しい価値が生まれようとしています。それが今の医療業界に必要なことだと感じています」(奥山教授)AI診断サポートサービスの実用化を目指すのは、2023年。皮膚がんの罹患率が高い北米やオセアニア地域、さらにはアジア圏など、海外への展開も見据えています。現在、ダーモカメラは国内でシェア率にして10%に当たる1200台ほどが使用されており、海外でも100台ほどの販売を実現しています。「AIを活用できれば、世界のどこにいても標準的な診断支援を行うことができます。我々ができることは、ダーモカメラの普及をさらに進め、信頼できる何万、何十万の症例画像をさらに蓄積し、AIの社会実装につなげていくことだと考えています」と、カシオ計算機開発本部本部長の持永信之さん。信大病院は、長年地域医療の要として機能してきました。医療過疎地も抱える長野県においてAI診断支援が実現すれば、患者を救える可能性が飛躍的に高まるはずです。日本初の皮膚がん診断支援が世界の新しいスタンダードを構築する、そんな将来が、いま目の前にまで迫っています。カシオ計算機(株)開発本部本部長(常務執行役員)の持永信之氏(左)と、開発本部メディカル企画開発部部長の北條芳治氏(右)。この日の取材は東京からリモートで参加いただいた。AI判定で敷居が低くなる皮膚科の未来と世界標準を見据えた社会実装

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