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09や医療機器としてなじむデザイン性、薬物耐性などのアドバイスを行い、性能評価にも協力しています。同時に、カシオ計算機と信州大学との共同研究により開発していたのが、ダーモカメラ専用の画像管理ソフトウェア「D’z IMAGE Viewer」です。「ダーモスコピー画像は、撮影し、観察、診断するだけでなく、患者名や疾患名などを入力しながら、正しく整理することが求められます。これまでは、膨大な症例画像を医師が手動で処理しており、その負担はかなり大きなものでした」と古賀講師。一方、カシオ製ダーモカメラはWi-Fiにつなげることで画像を医師自身のPCに即時転送することができ、カルテナンバーなどを入力しておけば、PCに取り込んだ際、ビューアーが自動で振り分けてくれます。患者の名前や症例ごとに抽出したり、似たような症例ごと並べ替えたりすることもでき、血管強調変換、構造明瞭変換など、皮膚病変が観察しやすくなるような変換機能も備えています。2019年から医師向けに無償提供を開始。それと同時に、専門医の育成のため、数千の症例データの閲覧や診断トレーニングが可能な学習用サイト「D’z IMAGE」の構築も行っています。こうしたサービスの先にあるのが、「AIによる自動診断支援サービス」です。医学分野でもAI研究が盛んに行われており、2017年にはスタンフォード大学のチームが専門医レベルの皮膚がん画像識別アルゴリズムの開発に成功。診断補助や患者の疾患啓発用アプリなどのサービス提供が始まっています。「しかし、臨床の現場で利用するにはまだまだ信頼性が低く、医師、患者さんに実際に役立つような実用的なAIはなかなか出てきていなかったのが現状でした。ビューアー開発の頃から構想はありましたが、日本の、また世界の医療にも役立つAIをつくろうと2018年頃から始まったのが、このプロジェクトです」(古賀講師)AIの開発には、ビッグデータが必要不可欠。日本での利用を目指すのであれば、日本人の症例をAIに学習させることが必要です。古賀講師と皆川助教は、信大病院が蓄積してきたデータのほか、個人情報の保護にも配慮したうえ、日本全国の医療機関などから数万もの膨大な症例画像を取り寄せ、AIの要となるビッグデータとして提供を行いました。2019年には、AMED(日本医療研究開発機構)の「先進的医療機器・システム等開発プロジェクト」に採択され、開発に関わる動きが加速。現在は、皮膚腫瘍のうち、特に重要な①メラノーマ、②基底細胞癌、③色素性母斑(ほくろ)、④老人性角化症の4つにターゲットを絞って開発を進めています。このうち、①メラノーマ、②基底細胞癌は悪性腫瘍で、これら4つの腫瘍を識別することは、皮膚科医の至上命題。採択から3年目を迎え、AIのプロトタイプはすでに完成、4つの腫瘍に対しては正答率約90%という、高い精度を実現しています。皮膚科専門医が70%程の精度であることと比較すると、驚異的な数字です。将来的には、医師が症例画像をクラウドにアップすることで、AIがすぐに判定結AIを活用した皮膚がんの診断支援システムとはどのようなものかCASIOの皮膚科におけるメディカル事業展開構想。2023年にはAI診断サポートサービスと世界展開を目指している。信州大学学術研究院(医学系)講師信州大学医学部附属病院皮膚科古賀 弘志(こが ひろし)1995年信州大学医学部卒業、2008年信州大学医学部附属病院助教、2017年より現職(同年11月から病院主担当)信州大学学術研究院(医学系)助教信州大学医学部皮膚科学教室皆川 茜(みながわ あかね)2001年信州大学医学部卒業、2017年信州大学医学部助教(特定雇用)、2018年Graz医科大学留学を経て、2018年より現職PROFILEPROFILE

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