now127_web
6/20

メインの伊那スタジオには、信州の伝統野菜の認定委員で、本プロジェクトを監修した信州大学学術研究院(農学系)の松島憲一准教授、県内外の直売所のネットワークづくりを進める産直新聞社の毛賀澤明宏代表取締役、信大卒業生でもある伊那ケーブルテレビの平山直子アナウンサーの3人が登場。中継先の長野県下の4スタジオには、「ぼたごしょう」(信濃町)、「山口大根」(上田市)、「保平蕪」(松本市)、「ていざなす」(天龍村)の生産者を1人ずつ招待しました。長野スタジオ(INC長野ケーブルテレビ)は、シンポジウムを後援した信州の伝統野菜を所管する県農政部園芸畜産課の担当者も同席しました。完成した映像コンテンツのダイジェスト版を1本ずつ視聴した後、各スタジオの局アナウンサーと伝統野菜の生産者とで撮影を振り返りつつ、生産者の方には栽培にかける思いを語ってもらいました。メインスタジオの松島准教授や毛賀澤氏とも中継を介してやりとりし、栽培を続ける上での課題や、必要な支援策について問題意識を共有しました。長野スタジオには、夫婦で約10年間「ぼたごしょう」の栽培に当たっている、関谷洋子さんに来てもらいました。ぼたごしょうは、ピーマンのような見た目をした緑色のトウガラシで、信濃町を代表する伝統野菜です。映像コンテンツの中では、信濃町の郷土料理「やたら」を紹介。ナス・キュウリ・ミョウガと一緒に刻んで、大根の味噌漬けで味付けした一品です。洋子さんは「焼きそばや炒め物などありとあらゆる料理に入れています」とし、「息子には“やたら”と入れるなよ、と言われることもあります」と、冗談交じりに話していました。INC長野ケーブルテレビの阿部夏美アナウンサーに栽培上の課題を問われると、洋子さんは「今まで地域で作り続けられてきた、いいぼたごしょうを残していくのが課題」と説明。「作ろうと前向きになってくれる若者がいない」と、後継者不足も挙げました。その上で、「農家は(農産物が)売れてなんぼなので、(農産物を)作ってお金になることで次につなげられる。生産者が生活できるように、県の知恵も貸していただきたい」と続けていました。伊那スタジオの毛賀澤氏は「一生懸命作っているから買ってもらわなければならないというのは切実な問題。おいしいから食べてもらえるという作り甲斐を(生産者に)感じてもらえるようにしなければならない」と指摘しました。赤カブの生産が盛んな木曽地方からは、信州の伝統野菜に選定されている7種類のうち、「芦島蕪」と「吉野蕪」(ともに上松町)が紹介されました。芦島蕪は自家用を主として種継ぎがされてきたため、これまでその存在は広く知られてこなかったといいます。20年ほど前から生産者が減り、現在生産を担っているのは、高齢の女性2人だけ。その一人、古澤はつゑさんは映像コンテンツの中で、「『もう嫌になった、嫌になった。今年はやめる』と思っていても、畑に来てカブを見るとそういう訳にはいかない。『カブが頼む、頼む』と言っているようなもので」と語っていました。松島准教授はスタジオで、「映像コンテンツの冒頭で05シンポジウムでは8本の信州各地のCATVスタジオCATV協議会専用の光回線を使いリアルタイムでスタジオをつなぐ「生産者が農産物で生活できる」まずは経済的な課題「準絶滅危惧種」の伝統野菜には「後継者不足」が共通課題信州の伝統野菜を映像で残す映像アーカイブスプロジェクトで制作された8本の映像コンテンツの完成披露を兼ねて、地域の伝統野菜について話し合う「リモートシンポジウム~信州の伝統野菜への誇りと思い~」を開催。伊那ケーブルテレビジョンのスタジオをメイン会場に、映像制作を担った長野・上田・松本・飯田のCATV4局のスタジオを中継でつなぎ、映像コンテンツに出演した生産者の皆さんも交えて、伝統野菜の魅力を発信しました。松島 憲一氏 〈信州大学学術研究院(農学系)准教授〉毛賀澤 明宏氏 〈産直新聞社代表取締役・編集長〉信州の伝統野菜映像アーカイブスプロジェクト&リモートシンポジウム信州大学×長野県ケーブルテレビ協議会 2020年度共同事業

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る