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信州大学と長野県ケーブルテレビ協議会は2012年度に結んだ連携協定に基づき、これまでもそれぞれの強みを生かして地域に貢献する映像コンテンツの制作やイベントに取り組んできました。2013年度には「信州の火祭り」をテーマに、長野県内各地のCATV各局が正月の伝統行事「どんど焼き」・「三九郎」などの映像を制作。地域で名称も様々なそれらの映像を持ち寄り、風習の違いなどを認識し合うフォーラムを開催。地域の伝統行事の多様性を検証、伝統文化の価値や資源を見つめ直す機会となりました。また、2017年度には、COC「地域をみなおす、うごかす。」と題した信州大学発地方創生プログラムの一環で、地域課題を解決する事業プランの公開審査会を実施。入賞者には活動のプロモーションビデオをケーブルテレビ各局が企画・制作するという新しい連携の形を示しました。長野県は山岳地帯のため同協議会の加盟局は30局と多く、各地で映像制作を協力いただけることから「広報連携長野モデル」とも言えそうな特色があります。日頃地域に密着して番組制作をしているCATV各局のフットワークに信州大学の学術的な知見が掛け算されることで、地域貢献につながる情報発信ができると考えています。そうした流れのもと、2020年度は信州大学と長野県ケーブルテレビ協議会による新たな取り組みとして、ともすれば消えてしまう信州の伝統野菜を映像に残し伝える、映像アーカイブスプロジェクトに取り組むことにしました。伝統野菜とは、広く市場に流通している野菜とは異なり、地域固有の特徴を持った野菜を指します。現在、生産・流通されている野菜の多くは、育てやすく見栄えの良い規格のそろったものがほとんどで、農業試験場や種苗会社が開発したこれらの品種は、病気に強く、収量・品質共に安定しています。対する伝統野菜は、収量が少なかったり新たな病気に対応しづらかったりと、不利な点が目立ち、現在の状況をこのまま放っておくと、伝統野菜は姿を消してしまうことさえ危惧される状況です。背景には、高度経済成長期に食生活の西洋化が進んだこともあります。伝統野菜は郷土料理とセットで伝承されてきた経緯があり、地域行事と家庭料理が次第に簡素になるにつれて、伝統野菜が求められる場面が少なくなってきている現実があります。   一方で、伝統野菜にはほかには代えられない特別な価値があります。それぞれの伝統野菜には独自のストーリーがあり、そのこと自体が地域の特産物としての魅力です。地域の人が代々受け継ぎ、守ってきた歴史が、ほかの農産物にない価値になるというわけです。長野県では2006年度に認定制度を設け、来歴・食文化・品種特性の3項目で一定の基準を満たしたものを「信州の伝統野菜」として選定しています。伝統野菜の存在意義を見直し、復興させようとする取り組みで、その認定委員のメンバーには、信州大学学術研究院(農学系)の松島憲一准教授が加わっています。農産物の品種改良や遺伝解析のプロフェッショナルであり、伝統野菜の栽培農家とも関係が深い松島准教授が監修することで、今回のプロジェクトの実現に至っています。松島准教授を中心に、撮影する伝統野菜の選定を進め、最終的に2020年度は9種類8本の映像コンテンツを制作することに。その中には、信州の漬物文化を代表する「野沢菜」(野沢温泉村)、地域によって若干呼び名が変わる「ぼたごしょう」(信濃町)、大きな見た目が印象的な「ていざな03「信州の伝統野菜」希少種79品地域の歴史・伝統・文化そのもの地域ブランドにもなり得るがともすれば消えてしまう伝統野菜信州を代表する「野沢菜」などまずは8本の映像アーカイブスを制作日本の原風景…長野県最南端の村で育てる「ていざなす」大きいものは長さ25センチ、重さ600グラムにもなるという「ていざなす」。長野県最南端の天龍村に約130年前から伝わる伝統野菜です。飯田ケーブルテレビの取材クルーは、「ていざなす」がたわわに実る畑の様子などを7分40秒の映像で紹介。生産組合の板倉貴樹さんは取材に対し、「なすに傷がつかないように1個1個葉かきをしています」と説明していました。とろけるような食感が魅力という、焼きなすと味噌田楽の作り方も紹介しています。信州の伝統野菜映像アーカイブスプロジェクト&リモートシンポジウム信州大学×長野県ケーブルテレビ協議会 2020年度共同事業

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