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ワインやお茶などに含まれることで有名なポリフェノールの1種「カテキン」には、さまざまな類縁体が存在します。真壁教授が化学合成に成功した「エピガロカテキンオリゴマー」は、カテキン類であるエピガロカテキン分子が複雑に結合した重合体(オリゴマー)。重合体は、その分子の数によって4量体、5量体などと呼ばれます。天然物の多くは、重合度が高くなればなるほど、さまざまな生理活性を示すことが分かっています。真壁教授が化学合成に成功したエピガロカテキンのうち、とくに高い機能性を示す5量体には、がんの転移に関わる遺伝子の発現を抑制することも発見されました。カテキンや自然界に多いエピカテキンの合成例はあるものの、エピガロカテキンオリゴマーの化学合成は世界初。実は、エピガロカテキンの4量体、5量体は特殊な化合物で、未だ自然界から単体で発見された報告はありません。「存在していることは予想していたものの見つかっていない、未知の天然物でした」と真壁教授。最近になって、オクラの種に含まれていることが明らかとなりましたが、それも4量体から15量体の混合物が検出されたというレベルで、その構造や特性がはっきりと示された訳ではありませんでした。しかも、いかに有ポリフェノールの1種「エピガロカテキン」4・5量体世界で初めて化学合成!自然界から見出される天然物の有用性信州大学 学術研究院(農学系)教授真壁 秀文PROFILE1997年東北大学農学研究科農芸化学専攻修了(農学博士)。日本学術振興会海外特別研究員(米国Purdue大学)を経て1999年より信州大学農学部に所属。2011年より現職。2019年より、信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所副所長も務める。自然界からは、人の手では一から合成することが難しい特殊な化学構造や、高い機能性を持つ天然有機化合物(天然物)が数多く見つかっています。2015年にノーベル賞を受賞した大村智博士が微生物から発見した化合物のように、科学が発達した現代でもなお、自然界には我々のくらしに役立つ多くの天然物が眠っていると考えられています。真壁秀文学術研究院(農学系)教授は、そのような天然物を探し求め、人工的に合成、改良することで、自然界からは微量しか得られない物質の有用性を明確にし、実用化するために研究を続けています。今回ご紹介する特許技術は、がん細胞の転移抑制効果も期待できるポリフェノールの1種、プロアントシアニジン類「エピガロカテキンオリゴマー」の化学合成技術。これまでにない機能性食品の開発や、試薬品としての活用が期待できます。(文・柳澤 愛由)OBnOOBnOAcBnOOBnOOAOCH2CHOBnOHOOHOOHOHOHOHOHOHOEGCG11

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