2021理学部研究紹介
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5研究から広がる未来卒業後の未来像数学科数理科学コース数学を学ぶということは、人生のあらゆる面で論理的に判断する能力が鍛えられます。数学を学ぶということは、人生のあらゆる面で論理的に判断する能力が鍛えられます。数学を学ぶということは、人生のあらゆる面で論理的に判断する能力が鍛えられます。さらに実生活ではこの能力を持っているというだけでなく、行動することが重要です。学生達が真の意味で「自分の人生を生きる」ということに対峙したとき、この能力を持っていることが自分にとって本当に重要なことに気付くでしょう。世の中のおおよその事象は、数学的な見地から微分方程式の逆問題として解析することが可能です。例えば、電気インピーダンス・トモグラフィ:身体に電極を何本かつないで電気を流す。電気の電流と電圧を測定して、身体中の状態を測定する。この問題は、微分方程式の逆問題の形で解けます。津波予測、飛行機の翼にあるクラック診断なども逆問題の形で解けるわけです。ロシア・サラトフ大学数学科卒業。数学博士、専門は解析学研究。トルシン イゴール 教授トルシン イゴール研究室私の研究テーマは、微分方程式の逆問題(の周辺)となります。逆問題は色々な科学と工学の問題からきます。順問題とは入力(原因とメカニズム)から出力(結果、観測)を求めます。その逆に、出力(結果)から入力(原因とメカニズム)を推定する問題のことは逆問題と呼ばれます。「ある女の人は、お腹が痛いとき不機嫌です。」ここでは“お腹が痛い”は原因、“不機嫌”は結果。つまり、女の人の不機嫌の理由が分かることが逆問題といえるでしょう。(色々な理由が考えられるが、解は「お腹が痛いでしょうか?」となります。)もうひとつの例は、“太鼓逆問題”(スペクトル逆問題のひとつ)です。太鼓の音は、太鼓の固有振動数で決められている、そして太鼓の形にも依存している。つまり、“太鼓逆問題”とは、音(固有振動数)から太鼓の形を求めることができます。こういったスペクトル逆問題を重点的に掘り下げています。逆問題の理論数学科研究から広がる未来卒業後の未来像数理科学コース電磁波の屈折は、線形作用素のスペクトルでコントロールされる。もし、電磁波の反射、屈折、干渉や回折を自由にコントロールできれば、透明人間(外部から見えない)ができる!ノイマン・ポアンカレ作用素と呼ばれる線形作用素に対して、スペクトルを計算している例(図では、スペクトルに対応して振動している固有関数と呼ばれる関数の様子を図示している)。K. Ando, H. Kang, Y. Miyanishi, T. Nakazawa (2021)よりすっきりとわかることや理解することに慣れることで、多くの分野で活躍する際にも、方針や理解が進むことと思います。将来、仕事を進める上でも、完全に理解する癖をつけておくことは、必ず役に立つと思います。解けない方程式でも、対応するスペクトルなどの値ならば、捉え易い可能性があります。スペクトルには意味があることも多いので、様々な現象の説明にも利用できると考えています。また、量子力学、幾何学や数論とも深い関係があり、例えば数論では、ゼータ関数の零点と呼ばれる値とスペクトルの関係もみつかりつつあります。このように、線形作用素のスペクトルは、数学の進歩にも大きな役割を果たすと考えています。東京工業大学卒業、大阪大学にて博士号(理学)を取得。大阪大学特任研究員、特任助教、特任講師を経て2021年度から現職。専門は、大域解析学。宮西 吉久 准教授宮西 吉久 研究室物理現象から生命現象に至るまで、様々な現象は、微分や積分と呼ばれる計算を組み合わせて表現されています。例えば、音や電磁波の伝搬は、ラプラス作用素と呼ばれる(偏)微分と呼ばれる計算を組み合わせた線形作用素で表現されています。さらに音の伝搬ならば、波長や周波数のように、音の高さを求めることになります。ここで音の高さに対応する言葉を、数学ではスペクトルと呼んでいます。他の現象でも、様々な線形作用素のスペクトルを求めることは、現象の特徴を捉えることに繋がります。私の研究の目的は、多くの現象に対応する線形作用素とスペクトルの関係を調べることで、数学的な構造を捉えることにあります。大域解析学:線形作用素の     スペクトル理論とその応用

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