2021理学部研究紹介
8/40

4数学科数理科学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像数学科数理科学コース谷内 靖 研究室Navier–Stokes方程式はこの写真のような水の流れを記述する方程式。非圧縮性 Navier–Stokes 方程式と呼ばれる連立偏微分方程式。名古屋大学理学部物理学科卒業、名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了、名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士課程後期課程修了。非線形偏微分方程式を研究している。谷内 靖 教授私の研究室の卒業生は、高校の教員や公務員になるものが多くいます。卒業生が、数学の研究を通して培った思考力を発揮し、社会に貢献してくれることを期待しています。偏微分方程式とは、未知関数とその偏導関数を含む方程式のことです。多くの物理現象や社会現象は偏微分方程式によって記述され、偏微分方程式の数学的解析は自然科学全般で重要な役割を果たします。私の研究テーマは非線形偏微分方程式、特に流体の力学の基礎方程式を研究しています。流体には非圧縮性流体(縮まない流体)と圧縮性流体(縮む流体)があります。たとえば、水は非圧縮性流体であり、空気は圧縮性流体(縮む流体)です。私は非圧縮性流体の運動を記述する非圧縮性 Navier–Stokes 方程式を関数解析的に研究しています。非圧縮性 Navier–Stokes 方程式とは右のような連立の偏微分方程式です。詳しい記号の説明は省きますが、uは流体速度、pは流体の圧力を表す未知関数です。流体の流れの解析物質のトポロジカル相の分類表Atiyah-Singer の指数定理。非可換幾何学の起源にあたる重要な定理。窪田 陽介 研究室2017年、東京大学数理科学研究科博士課程修了(学位:博士(数理科学))。理化学研究所研究員を経て、2020年4月より現職。専門は非可換幾何、指数理論。窪田 陽介 講師(撮影:河野裕昭)数学を学ぶことで得られる、論理的に考えたり新しいことを一から学習するコツは、どのような職業でも役に立つと思います。また、今はデータサイエンスの発展などによって数学という分野の重要性が社会の中で増してきています。これからいろいろな可能性が開けていくことでしょう。非可換幾何は非常に抽象的な数学ですが、具体的な対象を扱うこともできる広範な射程を持つ理論で、思わぬところに応用されるポテンシャルを秘めています。実際、私の最近の研究のうちの一つはトポロジカル絶縁体という物性物理の新しい理論と関連していて、新しい物質をデザインするというような物理上の問題に隣接した領域で仕事をしています。私の研究分野は「非可換幾何学」と呼ばれる領域です。「非可換」というのは AB≠BAという、線形代数に出てくる行列の特徴を表していて、無限次元の行列(つまり作用素)に関する幾何を研究するのがこの分野です。例えば多様体やグラフのラプラス作用素やディラック作用素、量子力学におけるハミルトニアンのように、付随する作用素から対象の性質に迫るのが非可換幾何のコンセプトです。線形代数が数学にとって基本的なものであるのと同じ理由で、非可換幾何もまた数学じゅうを股にかけて広く応用されています。私自身も微分トポロジー、作用素環、物性物理などの分野で仕事をしています。非可換幾何学からすべてへ

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る