2021理学部研究紹介
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3数学科■■■■■■■■■■■■■■研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像数理科学コース数学科数理科学コースY 字型の図形の上の2点の成す配置空間上端と下端を止めたまま、切らずに赤い紐を手前に持ってくることはできない。1989年3月京都大学で修士号を受けた後、1993年2月米国ロチェスター大学でPh.D.の学位取得。1993年4月から信州大学で教鞭を取り、 現在に至る。玉木 大 教授トポロジーの考え方を直接使う職業は多くありませんが、トポロジーを学ぶ際に身につけた鳥瞰的な視点や、本質的な情報を不変量で取り出すという考え方は、どのような職業に就いても役に立つはずです。ポアンカレが19世紀末に創始して以来、トポロジーは抽象的な理論として発展してきましたが、20世紀後半になって数理物理学や他の数学への応用が発見されてきました。そして、21世紀に入って医学、生物学、工学といった様々な分野で応用が発見されています。これから更に、「連続的変形」の理論の応用が広がることを期待して、研究しています。玉木 大 研究室私の専門はトポロジーと呼ばれる分野です。その中でもホモトピーという「連続的な変形」を中心に研究しています。例えば、右上の図は 3 本の紐が絡まった状態ですが、「連続的変形」とは、紐を切らずに動かすことを意味します。図の赤い紐を切らずに他の2本の紐から外して手前に持ってくることは不可能です。この3本の紐は、3つの点が上から下に移動するときの軌跡とみなすこともできます。つまり平面の中で3点が互いに交わらないように動く方法を表しています。一般に、ある図形の中で複数の点が互いに交わらずに動く方法を調べることは、重要な研究課題です。そのような配置空間の理論を研究しています。連続的変形の意味を考える『射影平面』という図形を 3 次元空間に実現した図で、『Boy曲面』と呼ばれる。射影平面の性質により『自己交差』が生じる。(図は“Sketches of Topology” より)『結び目』の例。多様な絡まり方は、3 次元空間の性質を反映している。(図は“knot atlas”より)境 圭一 研究室東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了。学術振興会特別研究員、信州大学理学部助教などを経て、2016年より現職。専門はトポロジー。境 圭一 准教授社会を支える科学技術、その基礎の一つが数学です。筋道を立てて考える能力を生かして、システムエンジニアなどとして活躍している人もいれば、中学・高校の教員となっている人もいます。4次元、5次元、…といった高次元の『図形』は、決して夢物語でなく、素粒子論の世界などでは実態を伴って研究されているものです。我々の目には見えない高次元の世界を『見る』手段の一つとして『埋め込み』は有効です。さらに、個々の埋め込みは互いに関連しており、その関連を利用することで、全く新しい図形を生み出すこともできます。こうして幾何学の世界がどんどん広がっていきます。境研究室では『幾何学』を研究しており、テーマは『多様体』と呼ばれる図形の『埋め込み』です。埋め込みのもっとも代表的な例は『結び目』です(右上図参照)。このように、図形を(高い次元の)空間内に実現するのが『埋め込み』です。輪が様々な絡まり方をする理由は、我々の住んでいる3次元空間の性質にあります。幾何学で研究される図形の多くは、輪より複雑でわかりにくいのですが、例えば3次元空間のようにわかりやすい図形に埋め込むことで、その図形が『見える』ようになり、様々な性質がわかるようになります。埋め込みの諸相  ―高次元の図形を『見る』には

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