2021理学部研究紹介
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2数学科数理科学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像数学科数理科学コース「位相的場の理論におけるストリング作用素の計算例」日本数学会の一般講演で用いたスライドの一部。代数的組合せ論に現れる対象に対して圏論的な解釈を与える図式で、様々な圏とそれらの間の関手を示している。栗林 勝彦 研究室信州大学理学部数学科卒、京都大学大学院博士後期課程修了 (理学博士)、岡山理科大学理学部助教授を経て現職専門: 代数的トポロジー栗林 勝彦 教授中学高校の数学の教員、公務員、プログラマー、研究者等当学科、研究室で数学を学び数理科学的思考能力と思考持続力を身につけます。こうした能力はAI(人工知能)社会到来後にも活かせるに違いありません。日本語、英語など多様な言語を行き来するためには翻訳が必要でしょう。その翻訳に相当する圏論的概念が「関手」です。数学の各分野に現れる機能を抽象化することで、居場所に依らず応用できる一般論を構築できます。また具体的な対象を考察する場合には、その性質と相まってより豊かな世界が現れます。圏論を積極的に利用して、細分化・高度化された数理科学を俯瞰的立場から繋いで創発される世界が未来に広がっています。首都圏や成層圏などある領域を表す言葉として「圏」が使われます。数学で言う圏はcategory(カテゴリー)の訳なのですが、やはり、ある範囲を決めている概念です。少し強引な言い方ですが、圏の身近なモデルとして「言語」が上げられます。単語という「対象」とそれらを繋ぐ文法則という「射」から成っています。単語を勝手に並べても意味を持ちません。言語であるためには、対象を並べる規則性がその圏に備わっていることが必要です。私の研究分野は代数的トポロジーという幾何学の一分野で、圏論的な手法をふんだんに利用します。幾何学的な振る舞いを記述する言語を代数学的な言葉で表示して、そこから幾何学的な性質を解明する研究を行なっています。積極的応用圏論により  数理科学の世界を繋ぐ正n角形の持つ対称性を記述する群(二面体群という)を考えると、それは、n本からなるアミダくじを集めた集合のなす群(対称群という)の一部とみなすことができる。2004年名古屋大学理学部数理学科卒業。2010年名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士課程修了。専門は表現論。和田 堅太郎 准教授卒業生の多くは教員、公務員、SE等になっているようです。しかし、大学において数学を学ぶことは、将来を制限するものではありませんので、自分がやりたい仕事をするのが一番だと思います。私の研究が直接何かの役に立つということは、おそらくないでしょう。もちろん私の研究を含む分野の発展が、何らかの形で役に立つことはあるかもしれませんが、それは私の研究の目的ではありません。私の研究はあくまで学問としての追求であり、学問は現実に束縛されることなく自由な発想に基づいて行われるもので、その先に、想像もできないような壮大な世界が拡がっている可能性を秘めているのです。和田 堅太郎 研究室表現論という数学の一分野について研究しています。数学に限らず、自然科学の研究においても様々な“対称性”が代数系によって記述されます。そのような代数系の性質を知りたいわけですが、一般には代数系そのものを見ているだけでは理解することは難しいことが多いです。そこで、代数系が持っている性質の一部を調べやすいもの(例えば、線形変換)で“表現”して、そこの性質を調べることによって元の代数系の性質を調べようという考え方が表現論と呼ばれているものです。特に、古典群と呼ばれる良い性質を持った群から派生した代数系の表現論に興味をもって研究しています。表現論の拡がり

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