2021理学部研究紹介
34/40

30理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像 微生物微生物採取した土壌を対象に、微生物実験や化学分析を行う。有機物を微生物が分解することで、炭素や窒素、リンといった元素が循環し、微生物だけでなく他の生物にも利用できるようになる。研究により身につく論理性やプレゼンテーション能力は、文系、理系に拘わらず強力な武器となります。卒業生は、研究者や中学・高校の教員、分析会社といった理系の職種から、公務員などの文系の職種まで幅広い分野で活躍しています。1998年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。とくに森林土壌において、炭素や窒素、リンの循環に関わる微生物の働きについて研究している。また重金属汚染についての研究も、学生時代から継続中。國頭 恭 教授國頭 研究室土壌中の物資循環における微生物の役割を明らかにすることは、陸上生態系を保全しそのサービス機能を維持する上で有用です。また近年深刻になっている環境問題に対応する際にも重要です。例えば、温暖化にともない微生物による土壌有機物分解と二酸化炭素放出が増加するのか否かという問題は、現在まで解明されていませんが、微生物がいずれの応答を示すかで、将来の気候変動にも大きな影響を与えます。私たちの身近に存在する土壌は、植物の生育を通して全ての陸上生物を養っているだけでなく、多様な元素の循環など、様々な機能を有しています。また近年では地球温暖化が大きな問題となり、土壌の炭素貯蔵にも関心がもたれています。土壌中には、細菌、糸状菌、微小藻類、原生動物、ウィルスといった肉眼では観察できない微生物が数多く生息しています。様々な微生物が、植物が光合成でつくった有機物を分解して無機物として放出することで、植物の再生産が可能となります。このように、微生物は生態系の物質循環にきわめて重要な働きを持っています。一握りの土の中にも無限の世界地域の植物がどんな動物に利用されているかを知ることも生態系を知る上で重要。コオニユリを吸蜜するミヤマカラスアゲハ。信州の豊富なフィールドで実習、調査、研究ができるのが信州大学の強み。学部生の研究が出版される研究になることも。卒業生の中には、大学での学びを活かした専門職についた人も多くいる一方、一見、大学で学んだこととは関係ない職業についた人もいます。しかし、大学で学ぶということは、人とのかかわり方、問題の発見・解決能力、幅広い教養などを身につけることでもあります。そうした能力は、社会に出て、どのような場面でも生かされます。千葉大学大学院にて博士号を取得後、横浜国立大学、電力中央研究所、国士舘大学非常勤講師等を経て、2002年に信州大学へ着任。助教授を経て准教授。専門は森林を中心とした植物生態学。島野 光司 准教授植生・生態研究室日本人は、古来より自然とともに、自然に生かされながら生活をしてきました。我々を取りまく自然の成り立ちの仕組みを知っていけば、人は自然とうまく付き合っていくことが可能でしょう。植物の生き方を明らかにし、それを利用する動物の生態を明らかにしていけば、地域の生態系の仕組みを知ることができます。自然を、地球をまもるためにはその成り立ちを知ることが第一歩なのです。これまで人間は自然を利用し、文明を発展させてきました。しかしその一方で、過度な自然の利用などで、自然を壊しつつあるという側面もあります。人間が自然とうまく付き合っていくには自然環境の仕組みを知る必要があります。物質循環学コースでは、地球、自然がどのように成り立っているかを明らかにする研究を行っています。こうした中で、植生・生態研究室では、森林や草原、湿原などの植物がどのように生活しているのか、更にそうした植物たちが、どのような動物たちを養っているのかといったことを明らかにし、自然の摂理とその守り方を追求しています。自然環境を知る。自然環境を護る。

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る