2021理学部研究紹介
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29理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像当研究室は、2018年に立ち上げたまだ若い研究室ですが、研究活動を通じて、問題解決能力と論理的思考力を磨いてもらいます。社会のどんな分野でも活躍できる人材育成をしていきます。「水」は私たちの生活に無くてはならないものです。しかしながら、産業が発達した今日、人々は恵みであったはずの水を汚染させたり、無秩序に取水してきました。その結果、世界中で水による健康被害・水資源の枯渇という問題が生じてしまいました。私たちは「水」を限りある資源として認識しなければなりません。当研究室は、自然界の水の循環過程や賦存量の解明を通して、適切な水利用や水管理政策等を考え、持続的な社会の構築に貢献していきます。筑波大学大学院 生命環境科学研究科(博士課程)修了。在学時に日本学術振興会特別研究員(DC1)として研究し、2018年から現職。専門分野は、地下水水文学、トレーサー水文学。榊原 厚一 助教榊原 研究室地球上にはさまざまな物質が絶えず循環していますがその多くは水と共に循環しています。すなわち水循環過程を解明することで、環境中で起こっている諸現象の理解やその将来予測に繋がるといえます。特に、地下水は質・量的に最も重要な水資源の一つであり、陸域水循環の主要な部分を担っています。しかしながら、「目に見えない地下を流動する」という特性は、地下水流動の理解を妨げている要因となっています。地下水をより良く知るためには、地下水がどこを流れているか(経路)、どこから流れてくるか(起源)、どのくらいの速さで流れているか(速度)の情報が必要です。当研究室では、水と共に移行するイオンやガス等を追跡子として用いることで、地下水を含めた「水循環の視覚化」に挑戦しています。水循環の理解から地球環境を考える豪雨直後の湧水採水。溶存しているイオンやガスを分析し、水循環の過程を明らかにします。真冬の湧水調査。マイナス10℃、1メートルを超える積雪の中でも湧水は凍ることなく湧き出しています。理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像アオコ毒素microcystinの動物体内での毒性発現と代謝機構諏訪湖におけるアオコ毒素の動態(ミクロシスチンmicrocystinの生産・摂食・蓄積・分解及び流下)朴研究室では湖沼や川の水質調査や生物が生産している二次代謝物質の分析やバイオアッセイの方法を身につけることから、国、自治体や民間企業の分析分野及び浄水場、環境アッセスメント分野などで活躍されています。「生物は如何して毒を作るのか?」を命題に藍藻が生産している毒素の研究を始めて20年が過ぎました。毒素の生産・分解・動態の機構を明らかにすることは水因性の健康リスクを軽減することも可能であり、さらに毒素の生態学的な意味を明らかにすることでアオコ制御の技術開発にも発展できることも期待できます。信州大学医学部で学位を取ってから、1994年から信大理学部で学生諸君と諏訪湖におけるアオコ毒素の動態の研究を始め毒素分解菌や毒素の蓄積に関する研究を行っている。朴 虎東 教授朴 研究室私たち人間の活動は環境に様々な影響を与えています。特に湖沼・河川は集水域における人間活動の環境負荷の結果が複合的・集中的に現れ、もっとも人間活動の影響を受けやすい環境とも言えるかもしれません。たとえば、淡水赤潮・アオコの発生は、人間活動の環境への負荷によって水界生態系のバランスが崩れ、ある特定の生物だけが増殖した結果なのです。これらの生物の中には毒性物質を生産する種があり、湖沼の生物相に影響を与えるばかりでなく、水道の水質問題など私たちの生活にも影響を及ぼしかねません。朴研究室では、アオコを形成する藻類の中でも「藍藻類」、特にMicrocystis 属が生産している毒microcystinの生態系動態や人間への影響について研究をしています。湖沼のアオコ毒の生産-蓄積-代謝-分解-動態のメカニズムを解明したい

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