2021理学部研究紹介
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27研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像理学科生物学コース光操作により誕生した双頭ゼブラフィッシュの稚魚。受精卵から体ができる仕組みを解明する過程で生まれました。(左)ゼブラフィッシュの胚にマイクロインジェクションしている様子。(右)ゼブラフィッシュの胚に紫色のレーザーを当てている様子。生物学だけでなく化学、物理学など様々な知識・スキルを身につけられます。分野や業種の垣根を取り払い、クリエイティブな発想で世間を驚かせるユニークなものを創出し、社会で活躍しているでしょう。信州大学理学部物理科学科、同大工学系修士修了。理化学研究所、北海道大学勤務を経て2019年信大に帰ってきました。現在は生命現象を光操作する研究をしています。小笠原 慎治 助教分子光遺伝学研究室光遺伝学は農学から医療まであらゆる生命科学分野に応用できるバイオテクノロジーです。開発した手法や研究過程で得られた知見を有用生物創生に応用したり、立体臓器の人工作製へ応用したりするなどの未来を描いています。培養槽に浮かぶ多能性幹細胞の塊に四方八方からレーザーが照射され、徐々に臓器ができあがっていく、そんなシーンを想像してみてください。光遺伝学は神経活動や遺伝子発現、タンパク質の働きを光で操作し、従来の手法では調べることができない生命現象を解き明かしたり、生命科学へ応用したりする新しい研究分野です。小笠原研究室では、遺伝子組換え・ゲノム編集などの遺伝子工学(生物)、化合物を創出する有機合成(化学)、レーザーを用いた光学(物理)など様々な分野を融合し、新しい光遺伝学の手法、装置を開発しています。また、開発した手法で培養細胞やゼブラフィッシュの胚を使って、細胞分化や発生における遺伝子発現プログラムや神経細胞の可塑性(記憶)に関与するタンパク質の機能解明に取り組んでいます。光で生命を自在に操る理学科生物学コース野外環境で温泉を利用することが報告されている霊長類は、ヒト以外ではここ信州・地獄谷野猿公苑のニホンザルだけです。170万年前の人類の温泉利用について推測する論文が近年発表されており、いま信州は進化人類学的にもホットな調査地です(温泉だけに…)。ザンティップ(母)と名付け前の子。チンパンジーはヒトに最も遺伝的に近縁な生物種の1つ。子育ての方法はヒトとどのように違うでしょうか?2021年4月に誕生したばかりの研究室ですので、卒業生はまだひとりもいません。研究室の目標としては、フィールドで培った発想力と忍耐力(!)、そして研究をまとめるにあたって培われる論理的思考力と文章力を、ぜひ卒業後の未来に生かしてもらいたいと思っています。京都大学大学院理学研究科 博士課程単位取得退学後、日本学術振興会特別研究員PD、RPDを経て、2021年4月より現職。博士(理学)。専門は進化人類学・霊長類学。松本 卓也 助教進化人類学研究室本研究室では、現生のヒト(生物種としての人間)とヒト以外の霊長類の行動を注意深く観察し、比較することで、過去の霊長類の行動に関する考察を深めていきます。初期人類がどのように行動し、どのような社会を営んでいたかについて洞察を得るという点で、本研究室の営為は「最古の歴史学」と言えるかもしれません。現生の霊長類の知見を積み重ねることによって、我々人類がどこから来たのかを踏まえ、その上で人類の未来を考えられるようになりたいと思っています。進化人類学・霊長類学は、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を探る学問です。当研究室では、ヒトを含む霊長類の行動観察(+ゲノム科学、安定同位体分析、非接触バイタルセンシング技術など)によって、霊長類の生態と進化史の解明に挑んでいます。生き物たちの進化の舞台であるフィールドに自身も身を置きながら、「自然が微笑むとき」を待つ、フィールドワークの醍醐味を存分に感じられる研究室にしたいと考えています。人類進化の謎解きに出かけよう

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