2021理学部研究紹介
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24理学科理学科生物学コース生物学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像植物分子生理学研究室アントシアニンを蓄積しなくなったシロイヌナズナの突然変遺体の写真。野生型(左)と比べて右の突然変異体はアントシアニンを蓄積していない。この突然変異体を用いてアントシアニン生合成に関わる遺伝子を同定した。アントシアニンの生合成を調節する遺伝子を過剰に発現させたゼニゴケの写真。野生型(左)と比べて調節遺伝子を過剰発現させたゼニゴケ(右)では多量のアントシアニンを蓄積する。出身:富山県富山第一高校卒京都大学農学部卒専門:植物生理学   分子生物学久保 浩義 教授学んだ専門を社会で生かしていくには学部の勉強だけではむずかしい状況で、大学院に進学する人が結構います。また、教員や公務員になる人もいます。植物は様々な二次代謝成分を蓄積しますが、その中には医薬品などに役立っている化合物も多数あります。これらの化合物の生合成を調節している仕組みが明らかになれば、有用な成分を多量に蓄積する植物を作ることができるかもしれません。また、どのようなアントシアニンがどこに蓄積するかを決めている仕組みが分かれば、いろいろな色や模様の花を作ることができるかもしれません。私の研究室では、シロイヌナズナやゼニゴケを実験材料として用いて、植物の二次代謝や形態形成について調べています。シロイヌナズナもゼニゴケも、あまり見栄えのしないどちらかといえば嫌われ者の植物ですが、実験材料としての有利な性質をたくさん持っており、研究に大変役に立っている植物です。また、シロイヌナズナのような陸上生活に適応した植物と、ゼニゴケのような陸上植物の進化の基部にある植物を比較することで、 植物が示すいろいろな反応を進化的観点から見ることもできます。現在私の研究室で最も力を入れているのは、アントシアニンを始めとしたいろいろな二次代謝成分の生合成を制御している調節遺伝子に関する研究です。植物に問い、植物に学ぶ進化生態学研究室幹上生活に特殊化したアブラムシと、その甘露を採取する共生アリ。アリは甘露分泌の少ないアブラムシを捕食する。  (研究:D修了生・遠藤真太郎ら、撮影: 同・小松 貴)サラシナショウマ(白い花)の送粉者を観察する。本種は形態的に3タイプに分化しており、それぞれ分布標高や送粉者が異なること、および遺伝的にも分化していることを明らかにした。(研究:M修了生・楠目晴花ら)2003年より現職。専門は生態学および進化生物学。主著に『進化生物学からせまる』、『共進化の生態学』、『ハチとアリの自然史』、『群集生態学の現在』、『生物多様性とその保全』、『花に引き寄せられる動物』(いずれも分担)がある。市野 隆雄 教授「ナチュラリスト」として入学したあなたは、学部で「論理力」と「批判的思考力」を体得し、大学院でさらに研究を深めることによって「サイエンティスト」へ脱皮できます。卒業生には官公庁・民間で研究や自然にかかわる仕事についている人がいます。生物好きで「ナチュラリスト」のあなたに信州大学をすすめる理由。それは、近場でさまざまな面白い生き物に出会えることです。興味深い行動や生態をもつ生物が身近に生息していることは、野外研究をすすめる上で大きなメリットです。野外研究を通して、はじめて私たちは自然を理解することができます。その研究成果は、私たちの自然観を豊かなものにし、自然と共存することの大切さを教えてくれます。生物間の関係はどのようにして進化してきたのでしょう。市野研究室では、生物の種間相互作用による進化について、ハチ、アリ、被子植物などを材料に研究をおこなっています。例えば、①標高傾度に沿った花サイズの変化は、送粉ハチの体サイズが標高間で違うことにより引き起こされた適応進化なのか、②幅広い標高に分布する生物種では標高間で種内の遺伝的分化が見られるか、③アリ-アブラムシ共生系における化学物質による相互認識システムは、地理的に異なる進化をしているのか、などです。生物の共生と共進化を探る

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