2021理学部研究紹介
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数学科■■■■■■■研究から広がる未来卒業後の未来像数理科学コース距離正則グラフShrinkhande Graph対称デザインFano plane千葉大学大学院修了博士(理学)山梨大学工学部助手信州大学理学部、講師、助教授、准教授を経て、現在信州大学理学部教授花木 章秀 教授花木 章秀 研究室私のセミナーで学んだことが卒業後の仕事に直接役に立つことはないでしょう。しかしセミナーで学ぶことは学生の能力を十分に伸ばしていると思います。その力をどう活かすか。卒業後の進路はその人次第です。与えられた空間に与えられた形のものをなるべくたくさん入れることを考えます。すき間なく埋め込むことができるのであれば簡単ですが、一般には未解決で、非常に難しい問題の一つです。これは「最適化問題」の一つであって、「配送システム」や「スケジュール管理」など、多くの実用的な応用をもつ問題です。そして「配置理論」の重要な応用例でもあります。私の研究は基礎的なものであって、それが直接的に生活に役立つことは期待しにくいですが、将来何らかの形で何かの役に立つことを期待しています。「微分積分などの高校以上の数学など役に立たない」などと言う人がいます。しかし私たちの身の回りには高度な数学があふれています。例えば、スマートフォンなどの通信機器、またごくありふれた家電製品などでも、どれだけの高度な数学が利用されているか分からないほどです。また、近年の情報理論においては「有限」の数学の重要性が増してきています。私の研究の主題は「代数的組合せ論」です。情報のノイズなどを取り除く「誤り訂正符号」、効率の良い配置を考える「配置理論」など、「組合せ論」の扱うことは非常に多岐に渡ります。そのうち、性質の良いもの、美しいもの、の多くは代数的に良い性質をもっています。これらのものを高度に抽象化したものに「アソシエーション・スキーム」があります。それを「代数学」、特に「環論」、「表現論」の手法を用いて研究しています。現代生活を支える基礎科学はじめに凡  例信州大学理学部では、各教員は独自の専門分野を持ち、研究室などのグループに分かれて、日々の教育・研究を担当しています。それぞれの研究分野はそれ自体が探求の対象であるだけでなく、社会へ知的成果を還元する場であるといえます。この冊子では、そのような各教員が得意とする研究分野の内容、研究から広がる未来、学生の皆さんの卒業後の職業選択についてわかりやすく説明してあります。理学部の研究は、自然界のあらゆる現象を見つめ、そこから普遍的な事実や法則性を見つけ出すことを目指しています。それには「なぜ、そうなるんだろう」といった疑問を繰り返しながら、観察や実験で得られたデータを冷静に洗い直す目が必要です。自然界の普遍的な事実を探し出すことは、それ自体が「学び」であり、「喜び」であると同時に、人類や社会全体への貢献となります。ひとつひとつの探求や発見は小さなものかも知れませんが、それらを学生の皆さんが引き継ぐことで、社会の土台を作り、人類共通の知的財産として蓄積されます。さらに、それらはいつしか大きな変革につながるかもしれません。理学部で行われている研究は、基礎研究が主体ではありますが、産業や実社会への応用を目指す研究、既存の学問分野にとらわれない学際領域の研究まで広がっています。学生の皆さんは、多様な科学に取り組む自由な気風と、充実したカリキュラムのもとで、自分の目指す科学を見つけ、探求することができます。科学に興味のある皆さん、大学での学びを知りたいという皆さん、ぜひ、一つ一つの研究をのぞいてみてください。きっと魅力的な研究が見つかります。そんな研究は皆さんの世界を広げ、やる気を引き出してくれるでしょう。この冊子が皆さんが進路を選ぶにあたっての道しるべになれば幸いです。信州大学理学部長 吉田 孝紀教員の研究の一部を写真や図とともに紹介研究から広がる未来卒業後の未来像教員のプロフィール※ この冊子に掲載された情報は2021年6月時点のものです。※ 最新の情報は以下のURLから入手いただけます。 https://www.shinshu-u.ac.jp/guidance/media/publications/

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