2021理学部研究紹介
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12研究から広がる未来卒業後の未来像磁性物理学分野磁性体を特殊な環境(低温・高圧)で測定するには、精密な技術が必要となる。根気と集中力が試されるが、成功した時の喜びも大きい。測定用サンプルも研究室で作製する。塩の結晶を作るのと同じ要領で、金属を1000℃以上の高温の状態から徐々に冷やしていくと綺麗な結晶が得られる。1999年大阪大学修士課程修了後、金属メーカーにて磁気ヘッド開発に携わるが研究者を目指し大学院へ。2003年博士号取得後、研究員を経て2005年から信州大学理学部准教授中島 美帆 准教授物質研究のスキルと、物性物理の知識が役立つ企業(素材・電気・電子部品・自動車関連など)に就職する人が多いようです。システム関係や、教員・公務員など、さらに幅広い物理学が強みとなる進路を選ぶ人もいます。自然の仕組みを理解するのが科学であり、その仕組みを再現するのが技術です。人類は長い時間をかけて磁性を研究してきましたが、完全に解明されてはいません。多数の電子が作り出す世界は複雑で、だからこそ面白いのですが、科学により絡まった糸が解きほぐされ美しい姿が現れれば、自由自在に原子を組み合わせて新物質を作りだす技術が実現する未来が来るかも知れません。実験的に磁性の研究を行っています。磁性の主役である電子は、物質中に多く含まれているので、その働きは単純ではなく、物質ごとに多種多様な顔を見せます。さらに電子は熱や電気伝導の担い手でもあるので、思わぬ影響もあります。例えば、電気抵抗がゼロとなる超伝導現象は、磁性体では起こらないとされていましたが、極低温や高圧など特殊な環境下で超伝導を示す磁性体が新たに発見され、磁性と超伝導との関係が注目を集めています。このように1つのことに対する研究が、他の分野の新しい謎をよぶ、実験にはそんな面白さがあります。磁性と超伝導の謎にせまる研究から広がる未来卒業後の未来像理学科物理学コースSQUID(超伝導量子干渉素子)を搭載した最新の高感度磁束計による測定は新たに合成された材料の磁気的性質を調べるのに欠かせない。物理学は、先端技術の基礎となる現象を解き明かす学問で、コースでは何事もその原理から理解するという姿勢を身につけます。そうした力を生かして、機械系、電気系、情報系、鉄鋼系、金融関係など、様々な分野の企業で活躍しています。有効な磁石材料はモーターの効率改善に大きく貢献します。国内電力消費総量の約6割がベルトコンベアや空調に用いられるモーターによるもので、これらの効率をわずか1%向上できたとすると約65万kWhの電力削減になります。磁場制御の形状記憶材料は磁性駆動素子、高出力振動子や熱磁気エンジンなど従来にないアプリケーションが期待されます。磁気冷凍は、温暖化ガス等を用いない、高効率な環境にやさしい技術です。筑波大学大学院博士課程物理学研究科修了後、筑波大学準研究員、信州大学理学部助手、助教授を経て、2006年から現職。研究分野は磁性物理学。天児 寧 教授磁性物理学分野磁石の素は電子の持っているスピン。だから世の中のすべての物は磁場となんらかの作用があります。磁性物理学分野では、高温炉を用いて試料を合成し、磁化測定や電気抵抗測定等の巨視的測定、核磁気共鳴(NMR)測定、メスバウアー効果測定等の微視的測定によりその磁性を多角的に調べ、強力磁石材料のポテンシャルを秘めた物質群をはじめ、磁場で制御する形状記憶材料、磁性体のエントロピーを利用した磁気冷凍材料など、「磁場」との作用による、環境にやさしい新たな機能材料の開発のための基礎研究に取り組んでいます。すべてのものが磁性体!   磁性が絡む機能材料の基礎研究理学科物理学コース

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