2021理学部研究紹介
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10理学科物理学コース研究から広がる未来卒業後の未来像素粒子の標準理論における素粒子の一覧。物質を構成するクォークとレプトン、力を媒介するゲージボソン、質量を与えるヒッグスボソンで構成される。アトラス検出器の全体像。43m×22m。様々なテクノロジーを利用した検出器を組み合わせ、素粒子反応を隅々まで詳細に測れるように設計されています。高エネルギー加速器実験は世界中から集う数千人の研究者と力を合わせて行う大規模国際共同プロジェクトです。しっかりと研究をすれば世界で活躍できる人材になることができます。我々の研究目的は、宇宙誕生のなぞの解明、なぜ宇宙が生まれ現在の姿になったのか、その普遍の法則を探ることにあります。従って直接的に我々の生活に役に立とうという研究ではありません。また、大規模化する実験計画は長い時間と莫大な予算を費やしますが、宇宙の中でちっぽけな存在である人類が宇宙を理解しようという壮大な夢の実現に向けて地道に歩んでいく必要があります。一方で高エネルギー加速器実験では、最新鋭の技術を研究者自ら開発し、開拓してきました。加速器技術は、物質の構造を解明したり、医療など様々な用途に応用されるなど人々の生活に根付いています。2014年 名古屋大学大学院理学研究科修了(博士(理学))2014年 名古屋大学研究員、2017年 神戸大学特命助教を経て、2019年より現職。専門は加速器を用いた高エネルギー素粒子実験。川出 健太郎 助教高エネルギー物理学研究室欧州原子核研究機構(CERN)に建設された超大型加速器LHCを用いた国際共同実験アトラス実験(参考:上図)に参加し、素粒子を支配する物理法則の解明を目的とした研究を行っています。真空を満たし素粒子に質量を獲得させるヒッグス粒子は長年未発見でしたが、LHC実験により2012年に発見されました。これにより素粒子の標準理論が予言するすべての粒子の存在が実証されたのですが、ダークマターや力の大統一など標準理論では説明できない現象を探索するために、LHCは実験を続けます。私は、第3世代のクォークであるトップクォークに着目した研究を行っています。下図は現在までに知られている素粒子を示し、グラフの高さが素粒子の質量を示します。トップクォークの質量は極端に重く、力の媒介粒子やヒッグス粒子よりも重いことが分かります。このため素粒子の質量獲得において重要な役割を担う、また未知の素粒子と密接な結合が示唆される重要な粒子であると考えられています。現在は、LHCデータの解析から、トップクォークの生成や性質を精密に測定し、標準理論の予言と食い違いを詳細に研究しています。宇宙の始まりを素粒子実験で解明理学科物理学コース研究から広がる未来卒業後の未来像メキシコに新しく設置した検出器。宇宙線観測実験は国際共同研究として行われている。4カ国の観測所と観測装置(拡張を計画中)。GMDN(Global Muon Detector Network)と呼んでいる。しっかり学べば、大学で学んだこと、経験したことはどの分野であれ活かすことができます。自分自身の未来を拓きましょう。国際宇宙ステーション(ISS)が軌道上にあり、火星探査などという話も聞こえてくる時代です。人類が惑星間空間を航行する日が来たとき、その場所の状態がどうなっているのかを知っておくことはとても重要です。ISSでは、太陽からの宇宙線が大量に降り注ぐような時は、遮蔽された部屋に避難します。もし、宇宙天気予報が実現すれば、宇宙での活動にも貢献できるかもしれません。研究分野:宇宙線物理、宇宙プラズマ物理の分野で、宇宙線の加速や伝播モデルについて研究。加藤 千尋 教授宇宙線実験研究室太陽の活動は地球に様々な影響を与えています。例えば、フレアーやCME(Coronal Mass Ejection)と呼ばれる太陽表面での爆発現象は惑星間空間の磁場を乱し、衝撃波を生みだします。この擾乱や衝撃波が地球にぶつかると地磁気嵐やオーロラ発光などの現象を引き起こします。このように地上で様々な現象を引き起こす惑星間空間の現象を“宇宙天気”と呼んでいます。研究室では、日本、オーストラリア、ブラジルそしてクウェートに観測所を設置し、ほぼ全天を同時観測できる宇宙線望遠鏡を使って宇宙天気現象の解析とその理解を進めています。宇宙線望遠鏡で視る

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