2021理学部研究紹介
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9研究から広がる未来卒業後の未来像理学科物理学コース様々な次元に広がったブレーンブレーンに端を持つ開いたひも大学卒業後は、大学院へ進んでさらに最新の研究について学んだり、IT企業などに就職して大学で学んだ知識を生かして活躍しています。超弦理論は、重力を時空の曲がりとして表すアインシュタインの一般相対性理論と、微小な世界での物理法則である量子力学を矛盾なく統一できると期待されています。超弦理論は未完成の理論ですが、完成した暁には宇宙のはじまりやブラックホールの性質など、時空の量子論にまつわる多くの謎が解明できるはずです。遠い未来には時間や空間を自由に操作できるようになっているかもしれません。1994 東京大学理学部物理学科卒業、1999 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了 (博士(理学))奥山 和美 教授奥山 研究室物質を細かく分けていくと何からできているのか?この古代ギリシア以来の疑問を研究するのが素粒子理論です。私は物質の究極の構成要素は粒子ではなく「ひも」であるという超弦理論を研究しています。最近の研究によって「ひも(弦)」だけでなく様々な次元の広がりを持つ「膜(ブレーン)」も重要であることがわかってきました。また、平面上の情報から立体が浮かび上がるホログラムのように、時空の量子的な性質の背後には「ホログラフィー原理」があり、低次元の膜(ブレーン)の上の情報から高次元の時空が創出されるという現象を詳しく調べています。超弦理論とブレーンの世界理学科物理学コース研究から広がる未来卒業後の未来像ATLAS実験で観測されたヒッグス粒子生成事象の候補。ヒッグス粒子が変化した4つのミュー粒子(赤線)をミュー粒子(緑の台形)が捕えている。本研究室が建設に参加したミュー粒子検出システム。直径約22m の円盤状に全14層に並べられた約2m×1mの約3000枚の検出器と電子回路で構成される。研究には、物理学だけでなく、検出器開発、電子回路開発、ソフトウエア開発と様々な技術を総動員します。学部学生・大学院生は、それらの知識を身に着け、卒業後は、製造業、ソフトウエア開発などに就職しています。教員や研究者を目指す学生もいます。高エネルギー物理学は基礎科学であり、人の人たる所以の一つである知的好奇心を満たし、知の新しい地平を開くことが最大の目的です。得られた知見がすぐに私たちの社会に役立つものではありません。しかし、過去には、発見当時は役立たないものでも、今では社会に不可欠なものとなった例がたくさんあります。現在得られつつある知見が、遠い未来の人類に大きな幸福をもたらすかもしれません。東北大学大学院修了高エネルギー物理学実験放射線検出器開発粒子加速器を用いた素粒子実験による真空と時空の構造、宇宙の成り立ちに興味がある。長谷川 庸司 教授高エネルギー物理学研究室スイスのCERN研究所にある世界最大の粒子加速器LHCを用いた国際共同実験のATLAS実験に参加し、私たちの世界を形作る最小構成要素の素粒子とそれらの間に働く力を解明する高エネルギー物理学(素粒子物理学)の実験による研究を行っています。LHCは陽子と陽子を高いエネルギーに加速し、正面衝突させることで、ビッグバンによる宇宙開闢から10-11〜10-10秒後の状態を再現します。そこで発生した粒子をATLAS測定器でとらえることで、素粒子反応を解明することができます。これは、宇宙の誕生と進化を解明することにつながります。扉は開いた!粒子加速器が拓く     素粒子物理学の新たな地平

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