信大医学部研究紹介2021(日本語)_プレス品質
39/48

37治したい!私達は新しい治療を目指して研究します婦人科腫瘍 班婦人科腫瘍 班(チーフ:准教授 宮本 強)(チーフ:准教授 宮本 強)産科婦人科学子宮内膜癌および子宮内膜症に関連して発生する卵巣癌の遺伝子的および生物学的な解明を目的として研究を行っています。これまで長寿遺伝子として注目されていたSIRT1や鉄イオン運搬に係るLCN2が子宮内膜癌や卵巣癌の抗がん剤耐性を高め、癌の発生や進行に促進的に作用することを見出し、これらを標的とした新規治療法を開発すべく研究を続けています。また、従来は発癌促進的に働くとされるエストロゲンが、発癌抑制的に働く研究結果を発表するなど、斬新な研究に日々、取り組んでいます。さらに、予後不良で早期診断困難な子宮頸部悪性腺腫(MDA)と、類似する良性病変である分葉状頸管腺過形成(LEGH)との関係を明らかにし、術前鑑別診断法、早期診断法を確立すべく基礎および臨床研究を重ねており、世界をリードしています。・婦人科癌における長寿遺伝子SIRT1の機能とSIRT1阻害薬の有効性の検討・卵巣明細胞癌のLCN2による酸化ストレス耐性機序の解明と治療法の開発・子宮内膜癌に対する抗サイクリンA分子標的薬開発・子宮内膜癌妊孕能温存治療のためのMPA、HDAC阻害剤併用効果の検討・分葉状子宮頸管腺過形成(LEGH)の自然史と悪性化に関わる因子の探索子宮内膜癌、卵巣癌患者は急速に増加しており、死亡数も年々増加しています。またこれらの癌は比較的若年に好発することから、妊娠可能年齢での発生も増加しており、罹患による妊孕能喪失も大きな問題です。私達はこれらの発生過程を研究・理解することにより、新しい予防法や治療法の開発に繋げたいと考えています。そしてこれらの癌の発生率低下、治癒率向上だけでなく、確実な妊孕能温存が可能になることを目指しています。 大学病院で医師として研鑽しながら研究を続けることができます。また、米国Johns Hopkins大学などへの海外留学や国内の他の研究機関への留学実績もあり、積極的に支援しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【婦人科腫瘍斑メンバー】楽しく研究しています【卵巣明細胞癌のLCN2免疫染色写真】強陽性を示すsiRNAによるSIRT1ノックダウンは卵巣明細胞癌細胞株ES2の増殖能を低下させた(Transl Oncol. 2017; 10: 621-631.Fig.2より抜粋)胎盤は神秘の臓器周産期・胎盤 班周産期・胎盤 班(チーフ:講師 菊地範彦)(チーフ:講師 菊地範彦)産科婦人科学胎盤は母体と胎児をつなぐ器官であり、酸素や栄養分、老廃物の交換をしているだけでなく、ホルモン産生や免疫にも関与し、胎児発育や妊娠維持に作用していますが、その機能は未だに十分には解明されていない神秘の臓器です。母児の健康を著しく損なう妊娠高血圧症候群(HDP)や子宮内胎児発育制限(IUGR)の主要原因として、妊娠初期の胎盤形成時における絨毛外トロフォブラスト(EVT)の子宮内膜・筋層への浸潤不全が注目されています。そこでEVT浸潤を調節する因子に着目し研究を進めています。これまでに鉄イオン運搬に係るLCN2がEVT浸潤を促進することなどを報告してきました。また、胎盤から分泌されるホルモンなどの様々な生理活性物質のうち、NRG1に着目し、胎児肺成熟を促進する因子の検索や、胎盤絨毛の栄養膜細胞の老化が、ヒトにおける約280日の在胎期間を調節している可能性について研究を行っています。・EVTの浸潤調節におけるLCN2関連因子の機能の検討・胎盤の老化機構に関する研究・胎児肺成熟診断マーカーとしての、母体血中NRG1の有用性の研究妊娠初期のEVT浸潤不全のメカニズム解明から、HDPやIUGRハイリスク症例の選別や予防法の確立に繋がることを期待しています。また私達の研究成果から、新生児予後を大きく左右する早産予知や予防法の確立、さらには胎児肺成熟を促進する因子の解明などにより新生児予後を改善できる可能性があります。このようなことから、妊娠・出産がより安全なものにできると期待しています。大学病院で医師として研鑽しながら研究を続けることができます。また、国内の他の研究機関・医療機関への留学実績もあり、海外留学も含め積極的に支援しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【周産期・胎盤班メンバー】チームワークは最高です【細胞培養を行っている様子】機能解析に欠かせない実験手技である【妊娠初期胎盤絨毛組織のCK7(EVTのマーカー)免疫染色写真】下方が脱落膜を示す。EVTが浸潤している様子がわかる

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る