信大医学部研究紹介2021(日本語)_プレス品質
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34神経内視鏡を駆使した新たな脳神経外科手術の開発 ― 低侵襲手術をめざして ―神経内視鏡治療 班神経内視鏡治療 班(チーフ:講師 荻原利浩)(チーフ:講師 荻原利浩)脳神経外科学脳神経外科手術に代表される顕微鏡手術は、大きな皮膚切開や開頭、脳の圧排など、患者への負担が大きな手術になります。この侵襲性を軽減するため、近年、顕微鏡の代わり内視鏡を用いた神経内視鏡手術が急速に普及しました。この神経内視鏡手術は、治療困難であった脳深部(頭蓋底)病変や脳室内病変などを、低侵襲で治療することが可能となる画期的なものです。信州大学脳神経外科の神経内視鏡チームは、脳疾患に対する、神経内視鏡を用いた低侵襲手術の発展をテーマとし、様々な研究に取り組んでいます。・ロボティックステクノロジーを駆使した神経内視鏡手術の研究・経鼻頭蓋底手術における髄液漏修復法の研究・神経内視鏡手術における新規医療機器開発医療界全体で低侵襲性が重要視される昨今の風潮の中で、脳神経外科手術も侵襲性の大きい開頭手術より、低侵襲の神経内視鏡手術の適応範囲が拡大しています。今後さらに研究が進み、神経内視鏡手術が発展することで、内視鏡内蔵型ロボットの開発、そして近い将来、脳神経外科手術におけるロボティックサージェリー時代の幕開けが訪れると確信しています。神経内視鏡手術は夢と希望にあふれています。今後間違いなく発展していくであろう神経内視鏡手術分野の研究を通し知識や技術を身につけることで、将来幅広く活躍できると考えています。卒業後の可能性は無限大です。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像低侵襲手術をめざしてロボティックテクノロジーを駆使した、新たな神経内視鏡手術の開発に取り組んでいます。(イメージ図)神経内視鏡手術に用いる様々な手術機器神経内視鏡手術で脳の深部の観察や手術操作が可能頭を切らない新しい脳動脈瘤の治療脳血管内治療 班脳血管内治療 班(チーフ:脳血管内治療センター長  准教授 小山淳一)(チーフ:脳血管内治療センター長  准教授 小山淳一)脳神経外科学約30年前にMRIが臨床使用される前は、脳動脈瘤は破裂してから、つまりくも膜下出血になってから治療を行っていました。しかし昨今のMRIの画像解像度の向上により、脳ドックなどで脳動脈瘤は破裂する前に発見されるようになりました。くも膜下出血は死亡率が高く、救命できても重篤な後遺症が残ることがあり、現在では、脳動脈瘤が破裂する前に、安全で根治的な治療が可能となってきました。脳動脈瘤治療には、頭を手術で切る開頭クリッピング術(図1-A)と、頭を切らないカテーテルコイル塞栓術(図1-B)があります。脳血管内治療センターでは、カテーテル治療をより安全に行うための“新しいコイルの開発”と“コイルさえも使わない脳動脈瘤治療”を行っています。・新しいコイルの開発・コイルを使わない脳動脈瘤治療従来の脳動脈瘤塞栓用コイルは径が同じ円管状をしていますが、当センターではコイルに大小二つの径があるコイル(通称Wavyコイル)を研究開発しています(図2)。このコイルには今までない特性があり、脳動脈瘤治療の安全性及び根治性向上が期待できます。また、コイルを使わない新しい脳動脈瘤治療(フローダイバーター治療)が世界で始まっています(図3)。フローダイバーターは治療困難な大型の動脈瘤に高い効果があるので、当センターでも多くの患者さんにより良い治療を提供できると期待しています。日本人は器用で、日本のカテーテル治療は既に高水準ですが、世界のカテーテル治療は日進月歩です。卒業後は、ぜひ皆さんも脳血管内治療分野で活躍して、より安全で根治的な治療を一歩でも前に進め、世界に発信していきましょう。機器開発においても、日本の高い技術力が後押ししてくれるはずです。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像図3:フローダイバーター  A:大型の動脈瘤(点線の円) B:フローダイバーター(黒矢印)を留置 C:コイルが無くても瘤の縮小・消失が期待できる図1 A:開頭クリッピング図1 A:開頭クリッピングB:カテーテルコイル塞栓B:カテーテルコイル塞栓図2 従来型のコイル図2 従来型のコイル開発中のWavyコイル開発中のWavyコイル脳動脈瘤脳動脈瘤クリップクリップコイルコイル

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