信大医学部研究紹介2021(日本語)_プレス品質
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33てんかん外科は、てんかん患者さんの生活と命を守る大切な治療ですてんかん外科 班てんかん外科 班(チーフ:助教 金谷康平)(チーフ:助教 金谷康平)脳神経外科学てんかんとは脳の一部の神経細胞が異常発火し、それが脳の一部あるいは全体に伝播することにより引き起こされる一過性の発作が反復する疾患です。てんかんは乳幼児から成人・老年に至る全年齢層に及ぶ神経疾患で有病率が約1%と言われています。てんかん治療には抗てんかん薬の薬物治療が基本ですが、てんかん患者の約3割は薬剤治療が奏功しない薬剤治療抵抗性てんかんです。コントロール不良な発作により日常生活での制限や、怪我、原因不明の突然死などのリスクがあります。そんなてんかん患者さんの生活と命を守るために“てんかん外科手術”があります。・脳機能やてんかんの解明・てんかんの外科治療・包括的なてんかん診療の構築てんかん外科には画像には映らない脳の機能、つまり脳波をきちんと解析することが必要です。詳細な脳機能解析のためには脳から直接脳波を調べて解析しますが、この脳機能解析が進めば人間の心までもわかる時代が来るかもしれません。脳波や脳機能だけでなく、てんかんという病気もまだまだわからないことが多く、今後も臨床や研究で発展していく分野です。直接見ることのできない“てんかん”という病気を可視化して手術治療を行うことができるのが脳神経外科医が行うてんかん治療です。てんかんを外科治療で治癒させることが出来た時には感動と大きな喜びを感じることと思います。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像迷走神経刺激療法によりてんかん発作抑制を図ることもある(LivaNova HPより改変) 頭蓋内脳波頭蓋内電極を留置し(左)、頭蓋内脳波でてんかん発作が始まる焦点を詳細に確認(右)。その後焦点切除術を検討する。てんかん発作を感知して脳刺激を行う刺激装置(responsive neurostimulation (RNS))が海外では使用されている(NeuroPace HPより)頭蓋内電極手術用顕微鏡を使用した安全で、低侵襲な脊髄手術で、出来る限り早く日常生活に戻れるようにつとめています低侵襲脊椎脊髄 班低侵襲脊椎脊髄 班(チーフ:准教授 伊東清志)(チーフ:准教授 伊東清志)脳神経外科学低侵襲脊椎脊髄班は、背骨とその中にある神経(脊椎脊髄神経)の病気を研究し治療するチームです。脊骨や脊椎脊髄神経を障害し、手の痺れ・痛み、運動麻痺、歩行障害、下肢痛などの原因になりうる病気を、手術用顕微鏡を使用して、【安全】かつ【低侵襲】な手術を実施し、出来る限り早く日常生活に戻れるようにつとめています。特に、脊髄にできる腫瘍の治療に力を入れています。・頚椎症、腰部脊柱管狭窄症などの頚や腰の病気に対する低侵襲で安全な手術方法の工夫・脊髄腫瘍に対する安全な手術方法の改良と開発・手術の時に使用する器具の改良と開発いままでの背骨(頚椎、胸椎、腰椎)の手術は、肉眼で行われることが多く、手術成績は必ずしもよくありませんでした。「脊椎や脊髄の手術をうけると、術後寝たきりになる。だから手術は受けない」というお話をよく聞きます。それは違います。手術用の顕微鏡を使って非常に丁寧な手術をすれば、いままで悩んでいた手や足の「しびれ」や「痛み」から解放されます。私たちは、手術の方法や手術に使う器具を改良する研究を行い、治療成績をさらに改善しようと日々努力しています。卒業後は、脳の手術の研修とともに、頚髄、胸髄、腰髄、末梢神経(正中神経、尺骨神経など)の疾患の治療、研究にあたります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【脊髄の裏側にある腫瘍をとる実際の手術写真】手術用顕微鏡で観察しているので大きく見えるが、実際の脊髄の幅は、狭いところで8㎜くらいしかなく非常に繊細なテクニックが要求される【サージカルボディーサポート】いままで不安定であった立位での手術が、我々が開発したこの器具により、体が安定し、より安全に行うことが可能となった

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