信大医学部研究紹介2021(日本語)_プレス品質
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8シナプスで働く遺伝子を研究し、精神疾患の原因解明、治療法の開発を目指します私たちの研究室では、脳の神経と神経の繋ぎめであるシナプスの形成や機能を司る遺伝子についての研究をしています。シナプスは、近年精神疾患の原因となる部位と考えられるようになってきています。シナプスで働く遺伝子を改変したマウスを作って、マウスの脳機能を調べることで、それらの遺伝子がどのような働きをしているのか、さらには精神疾患がどのようにして引き起こされるのかを解明します。このような研究によって、精神疾患の新しい治療法が開発されることに繋がります。・遺伝子改変精神疾患モデルマウスのシナプス機能の解析・シナプス形成因子がシナプスの機能を司るメカニズムの解明・神経細胞でのゲノム編集技術の開発・精神疾患の原因が解明される可能性があります。・シナプスを標的とした精神疾患の新しい薬の開発につながります。・精神疾患の遺伝子治療ができるようになるかもしれません。・医学研究者になることを目指します。・海外に留学して世界の研究者と同じ土俵で仕事をします。・大学の教員になります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像分子細胞生理学(教授 田渕克彦)シナプス形成因子ニューレキシンの遺伝子をマウスの小脳で働かなくすると(TKO)、小脳の形成不全が起きて小脳が小さくなるマウスの神経細胞に遺伝子を導入している様子蛍光を発する遺伝子が導入されたマウス大脳皮質の神経細胞世界初 小児心不全専用治療薬の開発心不全とは、心臓の異常より全身の臓器に必要な酸素や栄養が分配できなくなっている状態です。先天性の心異常を持った子供にも起こり、小児の重要な死亡原因です。特に乳幼児発症の心不全は、重篤で劇的な経過をたどります。現在小児心移植例は増えていますが、まだまだ不十分で待機症例は増える一方です。このような子供たちが長い移植待機期間を乗り越えるためには良い薬が必要ですが、驚くべきことに世界的にも小児心不全専用治療薬は有りません。私たちは、この問題を解決すべく世界初の小児心不全専用治療薬の開発を目指しています。・小児心不全専用治療薬の開発・哺乳類の離乳前の循環移行を支える生理機構の解明・乳幼児突然死症候群の予防法の開発・低出生体重児の腎分化促進法の開発医学が進んだ現在でも、子供の病気専用の薬の開発は進んでいません。これは小児疾患の多くが希少疾患であり、また臨床治験が困難だからです。しかし子供は「小さな大人」ではありません。大人の薬が子供で重篤な副作用を生じることもあります。我々の研究から、新しい小児疾患治療薬が生まれる可能性があります。本教室では、多角的な視点や技術を用いた研究を行っているので、分子生物学から比較統合生理学まで研究者に必要な多くの技術を獲得できますので、有望な将来展開が期待できます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像分子薬理学(チーフ:教授 山田充彦)Kashihara, T., Kawagishi, H. et al. (2020) JACC: BTS 5: 1057-69

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