2021_信州大学環境報告書
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Shinshu University Environmental report私は、信州大学大学院工学系研究科社会開発工学専攻を2001年に卒業後、ホクシンハウス株式会社に入社しました。最初の6年間は木造住宅の現場を覚える為に現場監督として施工管理に携わりながら工法開発に関わる測定や解析を担当し、2007年から現在の部署へ配属となり、住宅の技術開発に従事しております。ホクシンハウス㈱は、長野県を中心に住宅の施工をしている地元信州のハウスメーカーで、断熱気密性能に優れ、省エネで快適に暮らせる独自の「FB工法」を1988年に開発。寒冷な長野でも暖かく快適に暮らせる家づくりを実践してきた会社です。近年、各地で集中豪雨による被害が発生しているように、地球温暖化による気候変動は私たちの生活に深刻な影響を与えています。地球温暖化対策は喫緊の課題であり、脱炭素社会の実現へ向けた取り組み、省エネルギーの動きは一層加速しています。とりわけ住宅建設に関わる家庭部門で最終エネルギー消費量を削減し、ゼロカーボンを達成するために重要となるのが住宅のZEH(Net Zero Energy House)化です。しかしながら、省エネ実現のために寒さや暑さを我慢するような家で、健康を害することがあってはなりません。「健康快適な暮らし」を「限りなく少ないエネルギーコスト」で、実現するのが真の省エネです。その為に必要な「断熱」、「気密」、「換気」、「冷暖房」の4つの要素をバランスよく満たした省エネ住宅の開発に取り組み、2020年度は、ZEHの目標値70%をクリアする実積率72%を達成することができました。2050年カーボンニュートラルを見据え、2025年度の新たな目標値80%に向け、更なる普及啓発に尽力すべきと認識しています。また、地球温暖化における夏季の猛暑対策として、2016年より信州大学工学部建築学科の高村研究室や蓄熱シート開発メーカーと共同で研究開発に着手。屋根面からの太陽熱の侵入熱量を低減させるため、断熱材の中間に潜熱蓄熱シートを入れた「FB屋根パネル」を2019年に開発しました。猛暑ピーク時の屋根からの侵入熱を抑えることで快適性を向上させ、冷房負荷を従来比で3.7%削減するなどの効果が認められ、2020年度の省エネルギー大賞『資源エネルギー庁長官賞』を受賞いたしました。「夏、熱を蓄えて捨てる」という潜熱蓄熱材の新たな活用方法として、今後の広がりに期待しています。現在は、独自の「FB工法」の快適性・省エネ性を更に向上させる技術の開発に取り組んでおり、測定、解析を高村研究室と共同で実施しておりますが、卒業後も先生方に気軽に相談できる環境があることに感謝しています。学生時代に学んだことは、幅広い分野での環境問題であり、一見すると自分に関係の無いことに思われるかもしれませんが、身近な問題や世界で起こっている様々な問題の多くは、環境と密接な関係にあります。在学生の皆様は、今後社会に出て多種多様な仕事をされると思いますが、環境問題はどの業界に行っても切り離して考えることはできない問題です。どうか広い視野で未来を見据え、意欲的に学んで欲しいと思います。現在の仕事と環境問題とのかかわり環境と生きる人づくり (OB・OGの環境活動)ホクシンハウス株式会社 木村 大樹さん木村 大樹・きむら だいじゅ2001年 信州大学大学院工学系研究科社会開発工学専攻修了2001年 ホクシンハウス株式会社入社     (旧社名 北信商建株式会社)FB工法:6面輻射冷暖房の全館空調システムFB屋根パネルの縮小版模型特 集10

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