統合報告書2021
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Integrated Report 2021 Shinshu University浄水から次世代電池の開発まで。多分野での産業実装が進む「信大クリスタル」「信大クリスタル」は、結晶の形を自在に制御し、求める機能を引き出す「フラックス法(=物質の融点よりもはるかに低い温度で単結晶を育成する技術)」を用いて、低コストで創成した高品質な無機結晶の総称です。民間企業との共同研究により、水から有害物質を除去する吸着材、高機能・高耐久な生体適合材料、電気自動車などの次世代リチウム二次電池用材料の開発も進められており、すでに浄水器などで商用化が実現しています。応用先は工業界のみならず、医療、農業、酒造りなどの伝統産業へも広がっています。さらに、一部地域で飲料水のフッ素汚染が深刻なアフリカのタンザニアでは、国際的プロジェクトが進んでおり、井戸水のフッ素除去を目的としたアニオン吸着結晶を搭載した浄水デバイスの現地実証試験を完了、現地に適したデザインの開発を進めています。また、信州大学では、「信大クリスタル」の産業実装を加速させるため、長野県と連携し「革新的無機結晶材料技術の産業実装による信州型地域イノベーション・エコシステム」(文部科学省 地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの支援を受け実施)を展開しています。今後、多分野への産業実装が進むことで、画期的な商品や社会システムの創生が期待できます。「信大クリスタル」が水をキレイにする仕組み 原子が規則正しく並んだ単結晶は物質の特性を最大限活用でき、形状や原子の並び方を制御することで、特定のイオン等を吸着するなどの特性を持たせることができます。例えば、重金属吸着結晶は、有害な重金属(鉛、カドミウム等)を高効率に、また選択的に除去するよう設計されています。日本酒信州大学の名前を冠した初めての日本酒「勢正宗 信大仕込」14Shinshu UniversityIntegrated Report 2021PRODUCTS「信大クリスタル」をつくる「フラックス法」とは、結晶の原料と溶媒(フラックス)を混ぜて加熱し、結晶原料とフラックス両方が液体となった高温溶液を作成し、それを冷却もしくは溶媒を蒸発させることで結晶を生成する方法です。条件を変化させることで結晶の形態を自在に制御することができ、目的に合った「信大クリスタル」を生成することができます。TOPICS 「信大クリスタル」とその関連材料を用いて、浄水デバイス、生体適合デバイス、リチウムイオン二次電池など、多分野で活躍する画期的な商品・システムを生み出します。「信大クリスタル」を生み出す「フラックス法」とは重金属吸着結晶を用いた浄水器の商用化「信大クリスタル」のひとつ重金属吸着結晶は、材料メーカーと共に量産可能なプロセスを確立しています。2018年12月には、携帯型浄水ボトル「NaTiO(ナティオ)」をトクラス(株)と共同開発し、市場投入しました。そのほか、2021年、長野県中野市の酒造会社(株)丸世酒造店に「信大クリスタル」を搭載した水処理装置を導入し、信州大学の名前を冠した初めての日本酒「勢正宗 信大仕込」を醸造、コラボブランドとして発売を実現しました。浄水器携帯型浄水ボトル「NaTiO」信大クリスタルができるまで(模式図)ティーバッグ型浄水器フラックス法を用いた機能性無機結晶材料「信大クリスタル」

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