(差替版)A4_総合人間科学系研究紹介_2021x4 (7)
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憲法の基本原理や歴史などを学ぶ〈日本国憲法〉や、意見や考え方が異なる人びとと共生するためのルールのあり方を人権の観点から考える〈共生のための人権研究ゼミ〉などを担当しています。専門は憲法学・比較憲法学(アメリカ憲法)。主に日本国憲法18条が保障している〈奴隷的拘束からの自由〉をどのように解釈すべきか、奴隷制を憲法で廃止した19世紀中頃のアメリカ立憲主義を素材としながら研究しています。また、高校生の政治活動の自由や、社会における不平等を裁判所が解決する方法についても研究しています。今から約2千5百年前のギリシャにおいて、相対性理論等の現代物理学の基礎となる重要な定理がピタゴラス学派によって発見されました。それは中学3年生で習うピタゴラスの定理または三平方の定理と言われる平面上の2点間の距離を測る物差(計量)です。この物差をもつ平面上の異なる2点を結ぶ最短線(測地線)は直線です。また、曲がり具合を表すものとして曲率があります。平面は曲がっていないので曲率は0です。対象と物差を変えて測地線や曲率等の幾何学的性質を研究(微分幾何学)しています。微分幾何学を用いて一般相対性理論が構築され、確率分布や時系列等にも応用されています。人権の中身は何なのか。異なる価値観を持つ人びとと共生する現代社会では、絶対的に正しい正解は一つとは限りません。しかし、このような社会だからこそ、個人を尊重するために公権力が踏み越えてはならないラインもあるはずです。人権について疑問を持ち、悩みぬくことでそれを発見して欲しいと思います。紀元前300年頃に編纂された「ユークリッド原論」は、円等の図形に関する定理と、数に関する定理が数学的に厳密に書かれた書物です。公理系を変えることで新しい幾何ができ、一般相対性理論に応用されました。基礎的研究は、他分野へ応用されて発展するまでに長い時間がかかりますが、必要不可欠です。現在、応用として自己回帰過程のなす空間の幾何学的な性質等を研究しています。解析学的な研究は多数ありますが、幾何的研究により新たな発見があるかもしれません。憲法が保障する人権を研究することは、自分が自律した個人として自由に生きるための社会の条件を探究することでもあります。なぜ憲法が人権を保障しているのか。憲法が保障するこのような「問い」を出発点として人間と社会の関係性を徹底的に考えることで、公正かつ自由な民主社会の実現に貢献することができます。専門書以外の一般向け数学図書も沢山あります。是非、触れてみて下さい。数学の見方が変わります。数学的な論理思考を養うことは、社会人としての強みになります。各分野で活躍されることを期待します。小池 洋平 准教授早稲田大学人間科学部卒業。同大学院社会科学研究科修士課程修了後、同大学院博士後期課程修了(博士�社会科学)。早稲田大学社会科学総合学術院助手等を経て、2019年に全学教育機構に着任。高野 嘉寿彦 教授東京理科大学理学部第一部数学科卒業。同大学院理学研究科修士課程修了後、同大学院博士課程修了(理学博士)。信州大学工学部助教授を経て、2006年全学教育機構に異動。4Washington D.C.にあったNEWSEUMの壁に刻まれたFrederick Douglas(奴隷制廃止論者)の言葉。〔写真はすべて小池撮影〕アメリカの奴隷制廃止に貢献したAbraham Lincoln大統領。微分積分学の授業風景です。微分積分学と線形代数学は理工系分野の専門科目を受講、また研究する上で基礎となる科目です。アルクビエレ計量から曲率テンソルを計算した用紙。アメリカ連邦議会図書館のメイン閲覧室。外国人でも無料で利用できます。ポアンカレの上半平面の測地線(半円)です。見た目は赤い線分ABが短いですが、実は弧AB(青)が短い。人文・社会科学教育部門自然科学教育部門     自律した〈私〉が自由に生きるための社会を探る自然や社会のさまざまな現象を幾何学的に解析する

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