(差替版)A4_総合人間科学系研究紹介_2021x4 (7)
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開発ブランド、技術力競合の攻撃を抑え事業維持事業提携など模倣防止ビジネスによる事業差別化オープンイノベーションのツール・協業時のNDA・営業秘密・情報管理(人材流出対応など)の裏付け(応用研究)事業化(市場投入)6,000特許権その他の知的財産権等5,0004,0003,0002,0001,000H22H23H24H25H26H27H28H29H30H31国内の大学等の知的財産権等に基づく収入額の推移05296326846402,2121,9926131,4461,0921,558基礎研究1,5321,4831,1108119794,4113,6623,1792,6842,576ビジネス展開産業化知財制度は基本的に世界共通魔の川死の谷訴訟に割く力がなくとも効果ありダーウィンの海特許権等の産業財産権は取得することが目的化しがちですが、活用することが大切です。大学は自ら製品を作り、販売するビジネス展開はできないことから、大学の使命の一つでもある研究成果を社会実装するためには、企業等が大学で創出された発明を実用化する必要があります。企業等が大学の研究に投資する決断に至るには、その研究から生まれた製品が他者の権利を踏んでいないか、取得した権利は製品を意識した適切な範囲となっているかに注目します。産学連携を進める上で重要となる権利取得及び活用に係る戦略について研究しています。リサーチ大学や研究機関は、研究成果を学会や論文誌で発表しているイメージが強いですが、研究成果の実用化や社会生活へ実装することも大学等の重要な使命の1つです。しかし、大学等が自らビジネス展開はできないため、研究成果の事業化は企業等へバトンを渡す必要があります。そこで、大学等で創出される研究成果の「知的財産」としての価値を評価して、特許出願や各種契約等により権利の保護と活用を図ることでその価値を最大化し、企業と共に世界を変えるイノベーションを創出につなげるための仕組みや知財戦略、企業との連携、大学発ベンチャーなどを研究しています。知的財産・ベンチャー支援室例えば、特許権について、その権利化の形は様々ですし、自ら設計できるものです。企業等に大学の発明の実用化を託す際に、製品や業界を意識した権利の形になるように、出願前から審査経過段階、権利化後の各段階で大学の研究者等を支援します。信州大学で創出される発明を業界の動向から想定される訴訟も考慮し、産学連携がスムーズに進むよう、広く強く役に立つ権利化を目指します。知的財産の戦略を考えるためには、経営者の視点での思考が求められます。大学や企業の研究者や開発者となることを卒業後の進路として選択される方、営業やコンサルティングの業種を選択される方にも知的財産戦略の考え方は糧になると考えています。大学等で行っている研究がビジネス展開に至るまでには、「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」という3つの難所があると言われています(右図)。死力を尽くして努力とド根性で乗り切るのではなく、調査や情報分析に基づく実効性のある戦略、他機関との連携・協力等により、難所をスマートに攻略して、大学等の研究を1つでも多くイノベーション創出につなげる仕組みづくりを目指しています。多くの企業が“オープンイノベーション”を掲げて価値ある大学等の知的財産を探索しています。ダイヤの原石とも言える最先端の大学等の知的財産の価値をいち早く見極めて事業可能性を考え推進する力は、会社員だけでなく自ら起業する際にも役立つスキルです。阪﨑 裕美 教授東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程前期修了。経済産業省特許庁入庁後、19年間、繊維、タイヤ、化粧料、固体吸着剤、膜技術等の特許審査、審判の業務に従事し、2020年信州大学に人材交流として着任。MBA。松山 紀里子 准教授岡山大学大学院工学研究科博士課程前期修了。特許事務所、山梨大学、慶應義塾大学、浜松医科大学、首都大学東京、慶應義塾大学病院を経て、2016年信州大学に着任。1級知的財産管理技能士(特許専門業務)、MBA。28知的財産の活用の種類には「独占」「連携」「信用」があり、スムーズな産学連携には、大学の知的財産に対しても何を求めているのか、企業目線で知的財産の役割を考える必要があります。特許出願すると1年半後に公開されます。したがって、大学の発明が隠し通せたり、侵害立証が困難であるならば秘匿し、企業とはNDAを結んで技術供与をし、実用化するという選択肢もあります。文部科学省「大学等における産学連携等実施状況について」に基づいて作成。大学等の知的財産権等のライセンスや譲渡による収入額は年々増加している。また、特許権以外の成果有体物や著作権等による収入が25%を占めている。イノベーションを創出するには3つの難所を越えるヒト・モノ・カネ・情報と、これらの資源を活かす「知恵」が必要になる。知的財産の活用オープン&クローズ戦略基礎研究からビジネス展開までのシナリオブラックボックスにするか隠し通せるか・vsリバースエンジニアリングオープン&クローズ戦略特許出願するか公開されてもよいか(出願から1年半で公開公報に)模倣判断が容易か権利の使い道をどうするか第三者が到達可能かアドミニストレーション室信用資金調達やM&Aの評価独占独自技術・信州大学で創出される発明の広く強く役に立つ権利化を目指します連携大学等で創出される知的財産の価値を最大化してイノベーション創出につなげる

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