(差替版)A4_総合人間科学系研究紹介_2021x4 (7)
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理論言語学の一領域である語彙意味論・レキシコンの分野から研究をスタートしました。現在は、言語学の知見を司法領域に応用させる法言語学(Forensic Linguistics)研究と、産業翻訳者としての経験をふまえた翻訳研究(Translation Studies)に取り組んでいます。メディア翻訳におけるパラテクスト、翻訳と外国語学習との関係、機械翻訳(Machine Translation)を英語教育に効果的に活用する方法などを調査、研究しています。「翻訳を通してことばと文化を考えるゼミ」では、海外の映画やドラマの字幕や吹替を実際に作ってみるなど、実践的なワークに受講生たちがとても熱心に取り組んでいます。「考えるゼミ」という教養ゼミナールを開講しています。この「考えるゼミ」では、ゼミ生自らが“考えることをする”場を実践的につくっています。3歳〜6歳の子どもたちが哲学する場をつくったり(「ちびてつ」)、「学校とはちょっと違う学び」というテーマの下、小学校で学びをデザインしたり(「学校をつくる」)、「良い学びってどんなの?」「学ぶってそもそもなんだろう?」「教えるってなに?」など正解はないが問いの多い“教育”について対話する場(Edcampという世界各地で開催されているエデュケーションプログラム)をつくってきました。「言語」や「法律」は、人間や社会について考える際の基盤となります。新たな切り口から両者を分析する手法を学ぶことが、皆さんが社会に出てから求められる問題解決能力を身につける役に立つことを期待しています。「知る」ことはとても簡単なことですが、その一方で「わかる」ということは容易なことではありません。しかし、苦労せず「知った」だけのことはすぐに消え、一度「わかった」ことは消えません。「知っている」だけのことは潔く捨て、「わかる」ことのみを大切にしていってほしいです。法律に用いられている言語や翻訳という活動を分析するということは、「ことば」を通して人間の思考の本質、根幹を問う試みであると感じています。法言語学、翻訳研究ともに日本での歴史は比較的浅く、今後の発展が期待される分野です。「ことば」というものの魅力を発信し、言語学の知見を社会貢献に繋げるためにも、法言語学や翻訳研究は有効な手法だと考えています。私は、認知神経科学(神経言語学・神経教育学)や言語心理学という複数の領域(脳科学と言語学 / 言語学と心理学など)に跨る研究をしています。一領域で得られた知見を、他の領域で応用できる可能性を模索しています。例えば、言語習得の熟達の鍵を言語熟達者の脳特徴をfMRI等で観察したり言語心理学の実証実験により探り、そこで得られた事を言語教育の実践に応用することで、教育効果をより確かなものにできるのではと考えています。兼元 美友 准教授関西学院大学文学部、文学研究科修士課程を経て、東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程。2002年信州大学経済学部、2006年全学教育機構に着任。有路 憲一 准教授上智大学外国語学部英語学科卒業、上智大学大学院外国語学研究科修士課程修了(言語学修士)。カナダMcGill Universityに留学。帰国後、信州大学特任講師を経て、2009年より信州大学全学教育機構准教授。12翻訳ゼミを開講しています考えるゼミ 2017言語熟達者�非熟達者の脳画像法言語学�翻訳研究の本場での研修ちびてつ Philosophy for Children英語教育部門英語教育部門法言語学と翻訳に関する研究良い学びとは?   ー自ら考える場をデザインする

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