保健学科_研究紹介2021
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―8―看護学専攻成人・老年看護学領域『どんな時も自分らしく』その人らしさを尊重した救急看護の探求 “緩和ケア”と聞いて、何を思い浮かべますか? “ホスピス”や“終末期”“がん”などを連想されるのではないでしょうか。 現在、世界の救命救急センターや集中治療室では、入院早期から当たり前のように緩和ケアが行われています。海外の救命救急や集中治療の領域では、「緩和ケアとは、重篤な疾患とともに生きる患者のQOLを高めるための医療的ケアであり、患者の価値観に基づいて行われるケア」とされ、終末期や疾患に関係なく行われます。残念ながら日本の救命救急センターや集中治療室では、緩和ケアが浸透しているとは言えません。私は、患者さんの価値観を最大限尊重していくために、看護師が行うべき緩和ケアのあり方について研究しています。【2013年】 山口大学大学院博士前期課程修了【2014年】 急性・重症患者看護専門看護師取得【2017年】 東北大学大学院博士後期課程在学中【2020年】 信州大学着任加藤 茜 助教 救命救急や集中治療は、患者さんの回復を願うあまり、ときに医療者を中心に治療や看護が進められてしまうことがあります。現在、このような状況が患者さんやご家族を苦しめ、退院後にPTSDや抑うつ症状を引き起こしてしまうということが明らかになっています。 入院早期から緩和ケアを行うことは、医療によって傷つけられる患者さんやご家族を少なくすることにつながります。 人の人生の岐路に立ち会う仕事は、そう多くありません。手術や出産、死別…、およそ人の人生に数多くは起きないであろう場面に立ち会うことが許される看護職の醍醐味を、ぜひ経験してください。そして、看護に迷ったときは、大学院で学びを深めてください。成人看護学研究から広がる未来卒業後の未来像救命救急センターにおける死亡患者に関する学会報告専門看護師として大学生に講義スピリチュアルペインに関する国際学会の発表看護学専攻成人・老年看護学領域病院と地域が協力して患者さんを支える体制を作る 脳神経外科病棟の看護師として勤務していた時、麻痺などの後遺症を抱えて退院される多くの患者さんと出会いました。その後は訪問看護師として、そのような患者さんがご自宅で療養するため支援を行ってきました。 入院前も入院中も、そして退院後も、患者さんの生活はずっと続いています。したがって病院での看護と訪問看護など地域での看護も、別々に行うものではなく、つながっているべきものだと考えています。 また、患者さんの生活を支えるためには、看護師以外の職種の方との連携も欠かせません。病院と地域が協力し合い、多職種が連携して患者さんを支える体制を作るための研究に興味を持っています。名古屋大学医学部保健学科看護学専攻卒業。名古屋大学医学部附属病院と訪問看護ステーションでの勤務を経て、2019年10月に着任。近藤 協子 助手 患者さんの思いや生活の質など、はっきり目には見えないものと向き合うところが看護学の難しいところでもあり、やりがいでもあると感じています。広い視野を持ち、様々な分野の知識を身につけることで、少しずつ看護について考えていきたいと思っています。 看護職の活躍の場はどんどん広がってきています。どんな場所で働くとしても、色々なことに興味を持ち、また疑問を持てることが大切だと思います。大学での学びや経験を通して、自分自身で考える力を身につけてほしいです。成人看護学研究から広がる未来卒業後の未来像地域包括ケアシステムとは?出典:厚生労働省ホームページより現在は、植込型補助人工心臓を装着した患者さんの在宅療養に関する研究に取り組んでいます。

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