保健学科_研究紹介2021
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―32―作業療法学専攻からだに障害があっても自分らしく生きていく方法を考えていく 脳卒中や筋萎縮性側索硬化症といった脳や神経が侵される病気になると、手足が麻痺したり、筋肉が徐々に動かなくなるため、今まで当たり前にできていた生活がうまくできなくなります。私たちの研究室では、そのような人たちが再び生活を再構築していくよりよい方法について研究しています。①日常生活の動作を計測機器を用いて解析し、少ない力でも効率よく行える動作や福祉用具・居住環境について検討する。②腕や指に生じた麻痺をより回復させるための、反復経頭蓋磁気刺激法や末梢電気刺激と作業療法を併用させた治療方法の効果を検証する。③体が動かなくなっても視線だけでコンピューターに文字が入力できる装置の性能の検証や患者への適応などです。 私たちの研究によって、からだに障害を持った人たちが、生活しやすい動作や居住環境を獲得することができるようになったり、より手足の麻痺を回復させることができるようになったり、便利な道具をうまく使いこなしてコミュニケーションがし易くなったりします。そして、今よりもっと、その人らしく、より楽しく、生き生きとした生活が過ごせるような支援を創造していきます。 卒業生の多くは病院や施設の作業療法士として、患者の生活の再獲得や社会復帰を支援する仕事に携わっています。また、大学院に進学し、最先端医療や作業療法の研究を行っている卒業生もいます。作業療法士として働きながらの社会人大学院生も可能です。基礎作業療法学研究から広がる未来卒業後の未来像①日常生活の動作の解析起き上がり動作(左)や箸動作(右)の筋肉や関節の動きを計測機器を用いて解析している信州大学にて博士(保健学)を取得。信州大学助手を経て、2016年より現職。専門は身体障害系の作業療法。特に、脳卒中患者の精神機能や日常生活の支援に関する研究を行っている。務台 均 准教授②反復経頭蓋磁気刺激装置左上方のコイルから脳に磁気刺激を与えてから手や腕のリハビリを実施する③視線入力装置文字をみつめるだけでコンピューターに文字が入力できる装置近赤外分光法を用いた実験のイメージ作業療法学専攻変幻自在な作業療法の有効性を示すためのトランスレーショナルリサーチ 近年、神経科学の発展により作業療法分野においても様々な神経リハビリテーションが開発されています。佐賀里研究室では、主に近赤外分光法などの脳機能イメージング装置を用いた作業療法研究を行っています。作業療法では、そのものがセラピーになるのですが、この装置を使用すると生活行為中の脳活動をタイムリーに可視化することができます。最近では、簡便かつ効果的に前頭前野を賦活させる運動課題の探索や実車運転中のドライバーの生体反応(発汗学)について研究しています。このほかでは、がん作業療法の研究・教育・臨床に従事しております。2016年、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座地域リハビリテーション学分野修了(医学博士・作業療法士)2016年、本校に着任佐賀里 昭 准教授基礎作業療法学前頭前野の賦活によって認知機能の維持向上を狙った運動課題実車運転時の生体反応を計測している実験(発汗学) 生活行為中の生体反応を客観的に捉えることで、効果的な作業療法の開発に寄与することができます。一般に基礎的研究は応用されるまでに時間がかかるといわれていますが、私自身が作業療法士であり、実践するフィールドを有するため、橋渡しに時間を要しません。基礎的研究と臨床作業療法をつなぐトランスレーショナルリサーチによって作業療法の可能性を飛躍させることができます。 作業療法にはMeaningful Occupation(意味のある作業)という言葉があります。自身にとって価値のある作業(活動)に従事することで、幸せを感じることは一般に理解されていることですが、それをがん作業療法領域の臨床研究や生体反応指標を用いた基礎的研究を通して検証していくことによって、盤石な基盤に基づく作業療法を展開していくための一助にしていきます。研究から広がる未来卒業後の未来像

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