保健学科_研究紹介2021
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―30―理学療法学専攻情報技術を基盤とした新しいリハビリテーション介入を創造したい 神経生理学を基本に、データ解析技術を取り入れた研究を行なっています。具体的には、脳や脊髄といった中枢神経系の状態を脳波などの生理検査技術を用いて計測、得られた情報を加工してフィードバックすることで運動機能や認知機能を改善させるリハビリテーションアプローチの開発を行なっています。また、高齢社会を迎えている本邦において、健康寿命の延長を目指した取り組みを自治体と協力して行なっています。 今後は、医療・科学技術の発達により再生医療が注目されていくものと思われます。手術などによって再生した組織を、機能的に働かせる介入方法などを開発していきたいと考えています。 中枢神経系は一度障害されると回復はしないと長い間信じられてきましたが、近年の研究からその定説が覆されてきています。しかしどのような方法で、どれくらい介入するかなど解明されていない問いが数多く残されています。先人達により積み上げられた科学的事実を元に、新しいリハビリテーション介入を開発していきたいと考えています。 データ解析や研究デザインを学習することで、論理的な問題解決能力が身につくと考えます。また大学院において研究活動を行うことで、問題探求能力、課題解決能力が向上し、臨床における研究で活躍できる人材になれるものと考えます。応用理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像脳の機能を調整することで運動機能の改善を目指す新しいリハビリテーション方法神戸大学大学院にて学位取得(保健学)、名古屋大学大学院助教、講師、アメリカ国立衛生研究所(NIH)研究員を経て2019年より信州大学に着任。野嶌 一平 准教授ナビゲーションシステムを使った経頭蓋磁気刺激(TMS)実験NIH留学中の研究室メンバーと理学療法学専攻脳卒中患者の活動的な生活を支援できるリハビリテーション戦略の開発を目指して 脳卒中患者に対するリハビリテーションでは、日常生活活動の再獲得に向けた十分な身体活動が求められます。一方で、十分な活動量を確保できないと、治療効果が得られないだけでなく、運動不足による二次的な身体の衰えが進行してしまいます。私は理学療法士としての臨床経験から、脳卒中患者の身体活動を制限する問題として、「運動耐容能の低下」や「リハビリテーション意欲の低下」に着目しました。運動耐容能の低下ついては、運動や姿勢変化に対する循環機能ならびに自律神経機能の解析から、原因解明と治療方法の開発を目指した研究を進めています。また、リハビリテーション意欲については、教育工学を応用して効果的な動機づけ方略を開発する研究を行っています。 脳卒中は介護が必要な状態となる原因の一つであり、脳卒中患者の介護予防は本邦において喫緊の課題となっています。 私たちの研究成果は、脳卒中患者に対する新しいリハビリテーション戦略の開発に向けた学術的基盤として、臨床応用により患者の利益となるだけでなく、介護問題の解決や医療費の削減など、関連分野や社会への幅広い波及効果が期待できます。 理学療法士の活躍の場は、医療や福祉にとどまらず、スポーツ、国際活動、行政、研究教育など様々な分野に拡大しています。「理学療法学」という学問を学んだ人間として、どのように社会貢献できるか。幅広い視野で、考えていきましょう。応用理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像山形県立保健医療大学卒業。信州大学大学院修了(博士・保健学)。理学療法士として回復期病院に勤務後、日本学術振興会特別研究員(DC2)、国際医療福祉大学教員を経て2019年より現職。小宅 一彰 助教運動開始時の呼吸循環応答脳卒中リハビリテーションでの動機づけ方略に関する医療従事者の合意形成姿勢変化に伴う血行動態の変化

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