保健学科_研究紹介2021
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―28―理学療法学専攻若者、高齢者、何歳になっても必要な筋力正しい筋トレの方法とはなにか? 昨今はフィットネスブームとなり、いろいろなマスメディアで目にするようになりました。また国としても今後の医療費の増大を懸念して、生活習慣病対策など予防医療に力を入れており、科学的根拠に基づく効果的な運動プログラムの提示が求められています。 近年、筋力トレーニングにおけるトレーニング総量や強度、頻度、疲労困憊まで追い込む必要性など、筋力トレーニングの効果に影響する因子についての研究が国内外で注目されており、議論されています。そこで杉本研究室でも筋トレのメカニズムを明らかにし、筋力トレーニングの効果的でかつ安全な方法の確立を目指し、研究を行っています。 筋力トレーニングを行うことで、アスリートはパフォーマンス向上や障害予防、一般成人は健康増進、高齢者は転倒予防や健康寿命の延長のように、たくさんの人々に有意義な結果をもたらすことができます。様々な背景を持つ人々に対し、それぞれより効果的で安全な筋力トレーニングの処方が実用化し普及できると、将来の医療への貢献が期待できると考えます。 卒業後の進路は病院や医療施設だけでなく、大学院に進学も選択肢のひとつです。大学院では、研究を通してより深い知識や論理的な思考を学ぶことができ、医療現場やスポーツ現場など様々な領域で貢献のできる能力を養うことができます。基礎理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像筋トレの効果は様々な要因の影響を受けている。筋トレのメカニズムを明らかにし、より効率よい筋トレ方法の確立を目指すH26年信州大学医学部保健学科卒業後、松本市内の病院勤務を経て、H31年より現職。H28年同大学大学院医学系研究科博士前期課程を修了、現在同大学大学院総合医理工学研究科博士課程在籍。杉本 穂高 助教多用途筋機能評価運動装置による筋力測定前十字靭帯再建術後患者の筋力トレーニング風景筋トレの効果総量強度回数頻度休憩時間種目追込具合理学療法学専攻超音波画像を用いた新しい理学療法評価方法の確立へのチャレンジ 整形外科疾患・運動機能障害に対する理学療法の研究を行っています。特に膝関節における外傷・手術後の疼痛や関節可動域制限の因子を同定すべく、基礎実験・臨床研究を行ってきました。今後はそれらの知見・手法を応用させ、基礎実験で培った知識を臨床現場や地域社会に還元できるような、トランスレーショナルな研究を行っていきたいと思っております。 また他施設の現場の方々とも連携し、整形外科疾患に関する臨床研究の実践や、それらに関する研究論文をまとめあげ解析するシステマティックレビュー・メタアナリシスも試みていこうと、現在フィールド・ネットワークの拡大に努めております。 これまで経験的・主観的にしか評価ができなかった関節の機能障害(拘縮・癒着など)を定量的・客観的に評価することが可能となれば、それまでの伝統的な治療手技・テクニックを根底から覆す可能性があると思われます。従来の理学療法にとらわれない、新しい評価・治療ストラテジー(戦略)を考案していくことは、クリエイティブかつ非常に高いやりがいのライフワークになると思います。 基本的な評価・治療スキルを身につけると共に、海外の研究論文に基づく最新知見を収集する能力を身につけていただくことで最新の情報・エビデンスをアップデートしていく能力が得られます。共に理学療法のフロンティアを開拓していきましょう。研究から広がる未来卒業後の未来像前十字靭帯再建術後患者における膝蓋下脂肪体のエコー画像(左上:健側、膝関節屈曲位/右上:健側、膝関節伸展位左下:術側、膝関節屈曲位/右下:術側、膝関節伸展位)信州大学医学部保健学科卒業。金沢大学大学院医薬保健学総合研究科医学博士課程修了。2019年より信州大学医学部保健学科に着任。北川 孝 助教超音波画像の撮像風景膝蓋下脂肪体の病理組織学的変化(ラット膝関節矢状断)基礎理学療法学

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