保健学科_研究紹介2021
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―24―検査技術科学専攻コンピュータの目で見る細胞診断と細胞周期に関連するタンパク質 病気の部分より採取した細胞を顕微鏡で観察して、疾患の診断を行うのが細胞診断(細胞診検査)です。細胞診検査は、高度な医学知識と診断のためのトレーニングが必要で、細胞診検査を行う事が出来るのが臨床検査技師(細胞検査士)です。活躍の場は、病院や研究所などさまざまな医療機関になります。当研究室では細胞検査士養成施設への進学率が高いのも特徴で、将来、細胞検査士になる為の基礎知識を学びながら、人の眼だけではなく、コンピュータによる細胞判別や免疫組織化学という高度な技術を使った研究を行っています。 悪性腫瘍は現在の死亡原因の第一位であり、その治療は早期発見に大きく作用されます。細胞診検査は悪性腫瘍の早期発見に大きな役割を果たしています。しかしながら、人の目による判断では病気の特定が難しいこともあり、コンピュータの目を用いた診断技術の開発や免疫組織化学といった最新の技術を駆使することで、将来病気の診断精度が大きく向上することが期待されます。 臨床検査技師や細胞検査士(就職後、1年の実務経験もしくは細胞検査士養成コースにて取得する資格)として病院、検診施設、製薬会社などに勤務することができます。また、大学院へ進学することで国内外の第一線の研究機関で研究者として活躍することができます。病因・病態検査学研究から広がる未来卒業後の未来像細胞を解析するためのコンピュータシステム北里大学大学院医療系研究科で細胞診検査に関わる研究を学び、その後細胞周期関連タンパク、細胞増殖因子、画像解析技術(テクスチャ解析、機械学習)を用いた研究を行っている。木村 文一 講師人体から採取した細胞や組織の染色風景悪性中皮腫の細胞像(パパニコロウ染色)検査技術科学専攻免疫学的側面から疾患の現象を捉える 体内には、病原微生物やウイルスなど外界の異物から自分を守る「免疫」という仕組みが備わっています。免疫には、様々な細胞が相互にバランスをとって関わっていますが、そのバランスが崩れると、感染症、アレルギー疾患、がんの発生とその進展につながるという事がわかっています。当研究室は、このような疾患の新規バイオマーカーを探索したり、疾患の発症機序を免疫学的側面から解明する研究を行い、臨床検査や治療に貢献することを目指しています。現在は、好中球が微生物を捕えて生体を守る方法の一つである細胞外トラップという現象を検出する方法を研究しています。また、赤芽球癆という血液疾患の発症機序をiPS細胞技術を用いて解明する研究も行っています。信州大学大学院医学研究科博士課程修了。信州大学医学部附属病院臨床検査部及び先端細胞治療センターを経て、2015年4月から信州大学医学部保健学科。樋口 由美子 講師 好中球細胞外トラップは、感染症だけでなく、糖尿病、動脈硬化、がん転移などに関与していることがわかっていますが、日常臨床で検出する方法はありません。また、赤芽球癆もなぜ赤血球系のみ産生されなくなるのか、その機序は不明です。まだ臨床検査で捉えきれていないこれらの現象を数値として捉えることにより、疾患の診断・治療・予後予測のための有用な情報を臨床現場に提供できると期待されます。 細胞培養やフローサイトメトリー等の細胞解析法や、ELISAや電気泳動等のタンパク質解析法、遺伝子学的な実験手法を学び実践します。これらの技術の習得により、病院の臨床検査、細胞治療、企業の研究など様々な分野で活躍できる人材を育成します。病因・病態検査学研究から広がる未来卒業後の未来像蛍光顕微鏡を用いた好中球細胞外トラップの検出好中球が自分の細胞内容を投網のように爆発させて異物を捕える現象を蛍光染色して撮影しています。SDS-PAGEタンパク質の分子量の差を利用して分離するタンパク質分析法です。患者白血球から誘導したiPS細胞の培養iPS技術は再生医療や疾患モデルとして使用されるだけでなく、がんの細胞治療にも応用され始めています。クリーンベンチを用いて、培養細胞に微生物が混入しないように無菌操作を行います。

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