保健学科_研究紹介2021
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―20―検査技術科学専攻顕微鏡下に広がる細胞・組織の変化を捉える 病理組織標本にみられる細胞・組織の変化の意味や生物学的態度に思いめぐらすことはとても興味深いことです。現在では、細胞・組織の形態変化の背景にある物質や遺伝子の異常を組織標本上で捉えることができます。私たちは消化管粘膜の上皮細胞に類似した細胞から構成されている腫瘍が消化管以外にも発生することに注目して、その診断に有用な物質や診断の基準を研究しています。ピロリ菌はヒトの胃粘膜に棲息し、胃の悪性腫瘍の主たる原因と考えられていますが、ピロリ菌に似た別種の細菌がヒトや動物の胃粘膜に棲息していることが注目されています。これらの細菌の研究にも取り組んでいます。信州大学医学部医学科卒業後、信州大学医学部附属病院臨床検査部を経て、信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻に着任。太田 浩良 教授 正常組織や腫瘍組織において特定の細胞に発現している物質や発生する組織が異なっていても構成細胞が類似している腫瘍群においては発現が共通している物質があります。これらの物質には臨床検査としての利用や治療法に応用できる可能性を秘めたものがあります。ヒト胃粘膜に棲息するピロリ菌類似の細菌による胃疾患の発症機構の解明は胃疾患の治療や予防にも繋がります。 細胞や組織の変化として病気のイメージを捉えられることは、医療のあらゆる分野で大いに役立ちます。また、病気が発生する分子機構と細胞・組織の形態変化の両者を統合して考えることで病気の理解を深めることができます。生体情報検査学研究から広がる未来卒業後の未来像(Helicobacter heilmannii s.s.)(Helicobacter felis)胃腫瘍膵腫瘍肺腫瘍子宮腫瘍検査技術科学専攻蛋白沈着病の病態解明・簡便な早期診断法確立を目指して 生体内の蛋白質の構造が変化し、組織や細胞内に沈着する病気が蛋白沈着病であり、代表的な疾患がアミロイドーシスです。 アミロイドーシスは、構造変化した蛋白質がアミロイド線維とよばれる線維状蛋白となり、細胞外組織に沈着することで発症します。このアミロイド線維は、生理的には非常に排除されにくい蛋白で、徐々に蓄積して様々な臓器の機能を低下させます。有名なアルツハイマー病も脳のアミロイドーシスです。当研究室では、患者さんの組織に実際に沈着しているアミロイド線維蛋白を取り出して、どのような機序で沈着するのかを研究したり、できるだけ発症早期に診断できるような診断法の確立を目指しています。信州大学医学部卒。信州大学大学院修了。米国インディアナ大学医学部病理学教室に留学。遺伝性アミロイドーシスの研究に従事した。専門は神経内科学。矢﨑 正英 教授 アミロイド蛋白の沈着機序をさらに解明することで、沈着防止機構や新たな治療法のアイデアを世界へ発信できる可能性があります。 アミロイドーシスの簡便な診断法の確立は、患者さんの病気があまり進行していない時期に、正確な診断を下せるようになり、より早期の治療実現に役立てられるのではと思っています。 アミロイドーシスを含めた蛋白沈着病の多くは、いわゆる難病とされています。アミロイドーシスを研究することで、将来的に他の蛋白沈着病の病態解明研究を通じて、新しい診断法の確立、よりよい治療法の開発などにつなげていってほしいです。生体情報検査学研究から広がる未来卒業後の未来像心筋アミロイド腎臓沈着アミロイドアミロイド線維 ― 電子顕微鏡写真

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