保健学科_研究紹介2021
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―13―To cure sometimes,relieve often and comfort always 「時に治し、しばしば和らげ、常に慰める」 ケアは“comfort always, 常に慰める”です。しかし、子どもを産み育てる女性の視点から社会をみると、本当に必要としている人々が置き去りになっているのが実情です。現在、仲間や大学院生と取り組んでいる課題は、遺伝医療の質向上を目指した遺伝サポートグループと看護者との協働、特定妊婦の自己認識と生活世界と内的成長のプロセスに関与する因子の探索研究、ハイリスク新生児への超急性期ケアの理論化、長期かつ常時に医療ケアを必要とする疾病新生児の親への継続保育室(GCU)環境です。フィールドワークを中心に、当事者と協働し、固有の体験に寄り添うシステム作りを目指します。信州大学(医短)・聖路加看護大学卒。同大学院博士前期・後期課程修了。助産師として勤務後、教育機関へ。広島大学・同遺伝子診療部、山梨大学を経て、2019年、信州大学に着任。 私たちが生きる世界は多元化が進んでおり、その中で既存の考え方や理論は通用しなくなっています。複雑さを増す社会の様々な関係性を解きほぐすうえでは、複雑な姿のまま日常の文脈で研究する研究手法が重要です。 モノグラフ(質的研究論文)に表現された体験や語り(口述データ)を通して、既存の理論にあてはめるのでなく、目の前の複雑な現象に即した看護を提供することができるでしょう。 助産師の専門職アイデンティティは、母子の生命を守りぬく責任感と臨床能力の成長に伴って確立します。基盤が確立してくると、次の課題、女性や新生児医療、性/生殖医療、遺伝/ゲノム医療、公衆衛生や国際分野等からあなたのMissionが見つかるでしょう。母性看護学・助産学研究から広がる未来卒業後の未来像山梨県立中央病院ゲノム診療センター、山梨県内の保健所にて、妊婦さんとパートナー、長期療養を要する子の父母を支援しています。日本ダウン症協会、日本PWS協会の皆さんと共に、告知の在り方、親同士で支えあう子育ての啓発をしています。看護学基礎教育内に遺伝看護学教育を普及する活動をしています。中込 さと子 教授看護学専攻小児・母性看護学領域看護学専攻小児・母性看護学領域臨床心理学と生命倫理学「考える」を大事にすると人生が変わる 初学者向けの臨床心理学(りんしょうしんりがく)と、専門科目としての生命倫理学(せいめいりんりがく)、ふたつの科目を中心に、その他関連科目のいくつかを担当しています。 このふたつの科目はどう関係があるかって? たぶん、なんの関係もありません(笑) たまたま、わたしが両方を専門にしているというだけです。しいていえば「〇〇つながり」です。さて、〇〇のなかにどんな文字が入るか、一緒に考えてみませんか? どちらの科目でも、知識を吸収する、すなわち「覚える」よりも「考える」を大事にしています。茨城県東海村生まれ。東北大学大学院教育学研究科の博士前期および後期課程を経て、東京大学で保健学博士を取得。1996年に信州大学着任。附属病院での臨床心理士を兼務。玉井 眞理子 准教授 臨床心理学を学んでも、人の心がわかるようにはなりません。人の心がいかにわからないものかについて、少しだけわかるようになるかもしれません。 生命倫理学を学んでも、倫理的に正しい人間になれるわけではありません。なにが正しいのかについて考えることが、少しだけ苦痛ではなくなるかもしれません。 「少しだけ」ですが貴重な「少しだけ」です。 どんな職業につくとしても、あるいは職業につかずに生きていくにしても、臨床心理学や生命倫理学を学びながら考えたことは、「少しだけ」人生に役に立つはずです。そしてその「少しだけ」が、意外にも人生を豊かにしてくれる瞬間がきっとあります。母性看護学・助産学研究から広がる未来卒業後の未来像これが、だれかの、こころの風景だとしたら?生命科学技術の進歩がたくさんの生命倫理学的問題を生み出している。『遺伝医療とこころのケア』『はじめて学ぶ生命倫理』『出生前診断とわたしたち』ほか著書多数

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