保健学科_研究紹介2021
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―11―看護学専攻小児・母性看護学領域小児の脳脊髄炎の発症機序の解明とその治療法を探る 小児の予防接種後に発症する急性散在性能脊髄炎や成人の多発性硬化症などの脳脊髄炎の病態は現在でもよくわかっていません。 これらの疾患には実験的自己免疫性脳脊髄炎という動物実験モデルがあります。特別な種類のマウスやラットに自分の脳脊髄組織のタンパク質を免疫することでこの脳脊髄炎が起こります。マウスによって慢性進行性に経過する場合もあれば、1回発症して治り、再び発症して重症化する場合もあります。なぜいろいろな臨床経過をとるのかはよくわかっていません。 動物実験モデルを用いて脳脊髄炎の発症機序を明らかにすることができます。信州大学医学部医学科卒業医学博士。小児科医師。2001年信州大学医療技術短期大学部に異動。2002年から信州大学医学部保健学科教授。市川 元基 教授 人間を含めた哺乳動物の免疫系の働きは複雑です。リンパ球などの白血球がどのようにして自分の脳脊髄組織を攻撃するのかがわかれば、脳脊髄炎を起こした小児への新しい治療法がみつかるかもしれません。 医療においてはまだよくわかっていないことがたくさんあります。Evidence based learningの考え方を身に付け、臨床における小さな疑問に向き合い、その解決法を探ることのできる医療人を目指しましょう。小児看護学研究から広がる未来卒業後の未来像実験的自己免疫性脳脊髄炎を発症するⅠ型糖尿病自然発症マウス脳脊髄炎を発症したマウスの腰部脊髄の病理組織像左の写真を強拡大したもの。白血球が脊髄組織に浸潤している。看護学専攻小児・母性看護学領域すべての子どもの豊かな育ちのために―子どもの自律を支えるケア― 2016年の児童福祉法の改正では、全ての子どもが「子どもの権利条約」にのっとる権利を等しく持つことが改めて明記されました。 医療に関わる私たちは、家族や多くの人たちと一緒に、全ての子どもの「豊かな」育ちを支える必要があります。医療の高度化に伴い、生まれた命のほとんどが育つようになった一方で、医療的ケアを必要とする子どもたちも増えています。どのような病気や障害を持っていても、子どもは周囲と相互作用しながら、自らが発達していく力を持っています。私は主に医療的ケアや慢性疾患の幼児の自律過程の研究や、医療機関や在宅での支援を研究してきました。子どもに関わる多くの人と一緒に、子どもの豊かな育ちの支援をしていきたいと思います。 これまでの研究の中で、子どもの自律を考えるひとつのキーワードとして「動機づけ」を捉えました。古くて新しいこの概念は、掘り下げる価値が満載です。子どもは外から動機づけられるだけでなく、自ら働きかけ、相互作用する中で、経験を内面化し、次の行動への動機づけを行います。小さな時期からの子どもの自律に結びつく環境づくりや関わりを考えていこうと思っています。 小児看護は、新生児から思春期まで、現在は成人移行期も含めて激変する時期に関わる領域です。成長・発達や家族看護の知識、小児特有の病態の理解、子どもに合わせたケア技術、家族をはじめ様々な職種、教育や地域との連携が必要になります。深くて面白い!小児看護学研究から広がる未来卒業後の未来像聖路加看護大学卒業。同大学院看護学研究科博士前期課程、博士後期課程修了(看護学博士)。総合病院勤務、大学勤務を経て、2014年本学着任。平林 優子 教授学会で、NICUから在宅への移行支援の研修会を実施(日本小児看護学会教育委員会)研究結果を盛り込んだ、気管切開をしている幼児の発達や生活の見通しをもつためのパンフレット気管切開をしている子どものケアのDVD。家族がケアをする手順だけでなく、研究の結果から、子ども目線のケアのポイント、発達に応じた自律への促しなどを解説に含めた。

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