保健学科_研究紹介2021
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―10―看護学専攻成人・老年看護学領域すべての入院患者さんは必ず退院する―看護のバトンをつなぐシステムづくり― 大学を卒業後、附属病院に勤務して初めて配属になったのは神経内科の病棟でした。自分の症状が治らない病によるものと確定診断を受けて退院する方や、難病の再燃と緩解を繰り返して30回以上も入退院を繰り返す患者さん達に病棟看護師として関わりながら、退院後も患者さんの生活はずっと続き、入院というのは患者さんの人生の中では、非日常のほんの一部に過ぎないという当たり前のことに気づきました。 入院した患者さんは、転帰はさまざまですが必ず退院します。退院に向けたサポートを、患者さんの一番身近な存在である看護師が自信をもって実践し、患者さんの居場所に合わせて引き継いでいけるシステムづくりを目指して研究しています。東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学専攻卒業、山形大学大学院医学系研究科看護学専攻博士前期課程修了(看護学修士)。本学助教、山形大学等を経て、2021年4月より現職。進藤 真由美 講師 世界に類を見ない急速な高齢化の中、地域包括ケアシステムの実現に向け、各地で取り組みが進められています。看護職は、患者さんの「いのち」と「くらし」の両面を支援する専門職です。病棟看護師は患者さんの入院中だけ、訪問看護師は自宅療養中だけ、と線引きをしてしまうのでなく、その患者さんに必要な看護を切れ目なく提供することから安心・安全な在宅療養継続が実現します。 学生の皆さんは、卒業後は病院等で働き始める方がほとんどだと思います。じっくりと患者さんと向き合い、人生をシェアしあうような体験ができる訪問看護も10年先、20年先のキャリアの候補として頭の片隅に置いていただければ嬉しいです。老年看護学研究から広がる未来卒業後の未来像病棟看護師と訪問看護師がお互いの役割をよく理解することでより良い連携につながります難病患者さんの事例報告です病院の看護職が研究する際の 支援も行っています看護学専攻成人・老年看護学領域すべての人が良い最期を迎えられる社会を目指して 高齢化が進み、わが国では多死社会を迎えています。患者にとって延命よりもどれだけQuality of Life(QOL)を保つかが大切だとして、医療の目的や個人の価値観などが近年変化してきています。患者やその家族がより良い最期を迎えられることを目指して今まで研究を実施してきました。現在取り組んでいる研究は独居がん患者が主な対象です。高齢者の独居世帯の増加に伴い、家族のサポートが得られにくい独居のがん患者の終末期のQOLの実態を質問紙調査で明らかにしたり、医療者からみて独居がん患者が抱えている問題をインタビュー調査で明らかにしています。今後は身寄りのないがん患者への終末期ケアについても明らかにしていきたいと思っています。H24 東北大学卒業H24 東北大学病院勤務H29 東北大学大学院 博士前期課程修了R3 東北大学大学院 博士後期課程修了五十嵐 尚子 助教 独居がん患者の終末期へのケアは家族のサポートが少ないことから、患者だけでなく医療者にとっても困難感を抱える事があります。研究により、独居がん患者への適切な医療やケアの実態を明らかにすることで患者のQOLだけでなく、医療者の困難感の軽減にも繋がります。将来的には独居の人が安心してその人らしい最期を迎えられる社会を目指しています。 超高齢社会において、医療費や医療資源などが限られた環境の中で最大限の看護を提供する事が求められると思います。環境や患者の特性に対して柔軟に適応できる看護師として活躍できるように看護の基礎や考える力を大学で一緒に学んでいきましょう。老年看護学研究から広がる未来卒業後の未来像終末期独居がん患者に特徴的な問題について:医療者に対するインタビュー調査のカテゴリ結果がん患者遺族の複雑性悲嘆の尺度についての発表:第22回日本緩和医療学会学術大会

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