2022工学部研究紹介__日本語版
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研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績研究キーワードONEFORALL,ALLFORONE文化財建造物の調査、記録、価値づけ都市変容における古いものと新しいものとの統合を目指した都市設計ならびに建築設計■文化財建造物の調査、記録、評価最近の研究トピックス現在、いわゆる「空き家」が問題視されています。土本研究室では、「空き家」とみなされている建物を、これから使う人を眠りながら待っている「眠家」(みんか)として捉えています。古い建物をいちど壊してしまえば、それは永遠に失われてしまいます。われわれは、ひとつの建物がすべての人のためにあり、すべての人がひとつの建物のためにあるということを想定しつつ、世界の文化遺産に取り組んでいます。とくに、イコモス(ICMOS)の木の委員会(IIWC)での活動を通じて、全世界の木造建築の保存修理に関わっています。北アルプスの徳本峠小屋を保存・再生させて、徳本峠小屋再誕工事は、日本建築学会北陸支部の建築文化賞として、評価をいただきました。東御市の海野宿で文化財の利活用をおこなった「うんのわ」は、日本建築学会北陸支部の建築文化賞、建築士会連合会賞、’信州の木’建築賞など、評価をいただきました。世界中の伝統的建造物の建物調査や、建物調査をもとにした建造物の保存・再生に取り組んでいます。調査の際に、建物単体のみをとらえて調査をおこなうのではなく、その建物がたつ地域の歴史や、人々の生活文化についても学ぶことで、地域の人々の考えにより身近にふれることができます。また、文化的な建物を後世にまで残していくことは、重要なことです。保存の取り組みとしては、登録文化財や重要伝統的建造物群保存地区があり、再生の取り組みとしては、利活用案や設計案の提案などがあります。古いものと新しいものとの調和的な融合を目指すことで、漸進的に未来を模索する力を身につけることができます。建築に関する文化遺産は、都市や集落に立地しているので、周辺環境と良好な関係が構築されなければなりません。そのために、周辺環境を視野に入れたあり方を建築について提案する力を身につけることができます。未来に役立てる力を研究室で手に入れて、世界に羽ばたいて、活動する未来を想像してください。全世界を視野に入れつつ、先人から承け継いだ文化遺産を後世に伝えていくことは、世界の平和へと繋がる営みです。大学で学んだことを発展させて自分を自分で高めてください。また、自分の力を発揮できるフィールドを具体的に見出して、地域に根ざした活動も求められます。地域での一つ一つの仕事が世界につながっていきます。東京大学卒業、同大学院修士課程修了、同大学院博士課程中途退学、株式会社国建首里城復元グループ、東京工芸大学助手、信州大学助手、助教授を経て2001年より現職。地域の歴史と⽂化をふまえた建物調査、伝統的建物の保存と再⽣ 信州大学松本キャンパスにある赤レンガ建物の保存と利活用【私の学問へのきっかけ】私が建築を目指したのは、加藤周一『芸術論集』を高校生のときに読んだのがきっかけでした。理学部で生態学や動物学をやろうと思って理系で勉強していたのですが、いろいろと本を読んでいるうちに、文系の事柄にも興味を抱くようになりました。造形的な工夫を凝らすことができ、かつ、建築作品として世に出して、後世に遺る仕事として、建築に興味を持ちました。伝統の中から創造を目指すため、大学では、建築の歴史を学びました。教授⼟本俊和研究から広がる未来卒業後の未来像建築学科110

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