経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
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応用経済学科イメージに惑わされない企業実態の把握・活力ある組織の仕組みづくりにトライする! 私たちは、日々無意識のうちに色々な企業の商品やサービスにかかわって生活をしています。でも、企業への関心や印象はイメージによるものが多いのではないでしょうか。企業が公表する会計数値や情報を分析することで、イメージに惑わされない企業の実態を把握することができます。さらに、もっと深く企業の実態に迫りたいときは、実際に企業の経営者や社員にインタビューをすることで企業の生の経営実態を知ることもできます。医師が検査結果をもとに健康状態を把握し治療するように、会計は財務データをもとに企業実体を把握し、よりよい経営を目指して、組織内部の仕組みづくりも行なっていく分野です。 会計の研究は大きく分けると理論研究と実証研究の2つに分類されます。実証研究の面白さはデータを処理分析することによって、会計情報が外部の利害関係者などに与えるインパクトを明らかすることができる点にあります。会計情報を分析する研究以外にも、効率的な経営を行なうためのマネジメントをするための管理会計を企業に導入したり、導入後の効果を検証するといった研究も行われています。 このように会計を利用して企業外部と内部双方の視点から分析する能力を身に着けることができると、業種を問わず、企業の経営計画や戦略の立案、あるいは現場におけるコストマネジメントなど様々な企業経営の場面で活躍することができます。 管理会計・財務会計・公認会計士実習を受講することで、より深く企業を知ることが可能となります。関 利恵子 准教授明治大学商学部卒業後、2000年明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得修了、同年10月 信州大学経済学部講師着任。2003年 助教授(現 准教授)。2009年博士(経営学)。専門は経営分析・管理会計。上左:利益数値をグラフにすると0前後が突出した分布になり、利益が調整されていることがわかる。上左:業績向上させるためのストーリーを可視化させる戦略マップ。下:「公認会計士実習」による会計監査実習のグループワーク。研究の未来と卒業後の将来像7応用経済学科図形の「形」の複雑さを数値化し、身近な問題へ応用する 図形の概形を数学的に調べる位相幾何学とその応用を研究しています。穴が開いていたり、分割されたり、同じものが積み重なっていたりする図形の性質をどう特徴づけるかが大きなテーマです。特に図形の複雑さを数値化して、分類することに興味を持っています。 そのような古典的な不変量として、オイラー標数が知られています。これは図形の頂点の個数から辺の本数を引いてさらに面の個数を足して定義される素朴な値です。正多面体が何種類あるかの分類などに古くから使われてきました。最近の応用として、オイラー標数に関する積分によって、センサーを備えた領域上に散らばる人や物の総数を数え上げる手法が確立されました。この他にも様々な実学的応用も考えています。 従来の位相幾何学は、目に見えない、描くこともできない複雑で高次な図形を特徴づけるために、抽象的な議論が主体になっていました。近年になって、この位相幾何学が、工学やデータ解析に利用できることに研究者たちが気づき、「応用位相幾何学(Applied Topology)」という新しい分野が急速に発展しています。 上記でも述べたセンサーネットワーク理論はもちろんのこと、現在最も着目されているのは、データ解析への応用かもしれません。膨大な点の位置情報が与えられたとき、その配置を位相幾何学を通しておおよその形状で分類する方法です。このとき重要な道具が「パーシステントホモロジー」と呼ばれる点配置に現れる「穴」の情報を拾い上げたものです。現在までにタンパク質の構造解析やガラスなどのソフトマター構造の特徴付に貢献してきました。 現在の情報社会で、データ解析は企業にとっても重要であることは言うまでもありません。新たな手法を自ら開発し、それを自在に使いこなせる人材が期待されます。 組合せ論的に構成される空間(図形)の不変量の導入(オイラー標数、LSカテゴリー、Topological complexityなど)と、それらの工学、データ解析へ応用。特に、センサーネットワークやロボットモーション設計、パーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析。左:松本市のバス停留所位置データから得られるパーシステント図右:長野市のバス停留所位置データから得られるパーシステント図左:センサーネットワークグラフP上のN個のターゲットによるカウント関数h【N=5】 右:オイラー積分によりターゲットの総数を与える式田中 康平 講師2005年信州大学理学部卒業。高校教員を経て、2013年信州大学総合工学系研究科博士課程修了。同年より信州大学経済学部助教となり現在に至る。専攻は代数的位相幾何学および応用トポロジー。研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例

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