経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
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6応用経済学科自然災害が人々にもたらした心理的・経済的影響のデータ分析 地域や土地に紐づいたデータを扱う、都市・地域経済学を専門としています。都市・地域経済学には様々な領域がありますが、自然災害の影響に着目をして研究しています。その理由として、大きな自然災害が発生すると、その前と後では人々の行動が大きく変わることが予想されるからです。例えば、大きな洪水に見舞われた地域や、これから大きな津波が予想される地域では、人々が住みたいと思う場所も変化します。このような変化を地域や土地に紐づいた統計データを用いて明らかにします。 人々の行動変化をデータに基づいて定量化することによって、自治体の復興政策だけでなく、防災、減災政策に貢献していきたいと考えています。 日本において、自然災害は避けられない大きな課題です。一般的に、我々は被災時の避難行動や、正確な情報伝達の方法、復興政策などの【災害が発生した後の行動】に着目しがちですが、被災規模を最小限に抑えるための【事前対策】も重要です。そこで、人々がどのような土地を好み、また避けようとするのかを明らかにして災害に強い街づくりの立案に寄与します。 教育では、統計データを正しく読み取る能力を指す【統計リテラシー】の習得に力を入れています。誤ったデータ解釈を見抜けるようになることや、データの海から正確な情報を導き出す訓練を行います。さらに、演習講義を通じて、実際にデータを使った分析にも取り組んでもらいます。 卒業後の進路は様々ですが、統計リテラシーを身に着けることは、データを味方につけることを意味します。このような学習経験は、就職してから役立つスキルとしてだけでなく、皆さんの日常生活を少しでも豊かにするための武器になると確信しています。最大クラスの地震における震度の最大値の分布図(出典:内閣府『日本の災害対策』)経済データ分析ゼミの講義の様子芝 啓太 助教2014年龍谷大学経済学部現代経済学科卒業。2016年大阪大学大学院博士前期課程修了、2019年同博士後期課程単位取得退学(2020年に経済学博士取得)。2019年より現職。研究の未来と卒業後の将来像 応用経済学科犯罪と刑罰、そして、犯罪被害者について、私たちはどう考えるべきでしょうか? 毎日、私たちの周りには、犯罪に関する報道が溢れています。犯罪者が逮捕され起訴されて、そして刑務所に送られることにより、犯罪事件が解決されると思われがちですが、これだけで足りるでしょうか?確かに、犯罪者に対して、その犯罪行為に相応しい制裁を与えることは重要ですが、彼らが刑罰を受けたあと、いずれ社会の一員に戻りますので、彼らを再犯させないように、しかるべき対策を取るなどの工夫が必要です。そして、犯罪は、事後的処理ではなく、できるだけ事前的予防を図ることも重要であって、加えて、犯罪被害者に対しても、私たち社会全体が、その立ち直りを支援しなければなりません。このような刑事司法のテーマについて、考察・研究しています。 日本は、諸外国に比べ犯罪が少なく、安全な国として認識されています。しかし、著しい高齢化がもたらす犯罪コントロールへの影響や少数の再犯者が多数の犯罪を起こしてしまうなど、政策的課題が数多く存在しており、犯罪の少ない社会づくりの探求には終わりがありません。 これらの課題を考えるときに、犯罪と刑罰の内容を定める刑法と、犯罪を追及するための手続を定める刑事訴訟法を基礎にして、犯罪学や被害者学など学際的学問を活用しつつ、統計数字を根拠にしなければなりません。一見難しそうですが、マクロ的視点から問題を捉え、ミクロ的視点で解決案を探ることで多角的思考を促すことにつながり、実は面白いことです。さらに、制度面について、海外の法制度と比較する手法も欠かせないので、国際的視野を養うこともできます。 このような学問を学ぶことは、社会人としての知性の形成に役立ち、公的部門への就職は勿論、情報の収集・分析や戦略の策定が必要とされる民間企業でも転用できますので、卒業後は各分野で活躍できるはずです。呉 柏蒼 講師台湾台北大学法学部法学研究科修士課程(刑事法専攻)修了、慶應義塾大学法学研究科後期博士課程公法専攻修了。博士(法学)。慶應義塾法学研究科助教(有期・研究奨励)、帝京大学法学部法律学科非常勤講師などを経て現職。研究の未来と卒業後の将来像・覚せい剤などの薬物使用者に対して、犯罪者として処罰を与えること以外、薬物濫用の病人として刑事司法の流れで処遇することについての比較法的検討。・検察官実務の参考書「平成27年版検察講義案」の中国語訳の監訳。主な研究事例日本被害者学会において、犯罪被害者補償制度について発表を行い、制度の在り方について、学会にご臨席された先生と議論しました。・刑事政策には、犯罪の予防、犯罪者の適正な処罰と社会復帰及び再犯防止、そして、被害者の立ち直り、という三つの目的があります、究極な目的は、犯罪の少ない安全な社会の実現です。

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