経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
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20総合法律学科総合法律学科あらゆる人が関わる税を知り、あらゆる人が影響を受ける税の法制度を考えるどのような行為が犯罪となるのかを学ぶ 税金に関するルールを研究する租税法を専門としています。 租税法の中でも、個人の所得に課税する所得税において所得獲得活動によって生じた支出の取扱いを研究しています。特に大学や大学院における高等教育によって蓄積される人的資本をいかに租税法上に反映させるかという観点から、教育支出の資産化および償却の可能性に関心を持っています。人が教育を受けて能力を高めるという行為に対して、その価値を人的資本として把握し、その教育支出を租税法において控除するという仕組みにより、生涯にわたる学習や社会人の学び直しの促進を税制面から支援することができないかと考えています。 私の専門は、犯罪と刑罰に関する法律、「刑法」です。特に、他人の犯罪に関与する、という共犯の事例を中心に研究をしています。 人々は、ときには他人の犯罪に加担してしまう場合もあります。例えば、自分としては日常でよくある行為をしただけなのに、それを利用した人が犯罪をすることで共犯となる場合もあります。また、犯罪をしようとしている人をとめないことによって、共犯になる場合もあります。私は、このような、可罰的な共犯行為と、そうではない不可罰の行為との線引きを明らかにするという研究に取り組んでいます。 租税法は、みなさんの生活のあらゆる場面において、現在も将来も否応なく関わりを持つことになる法分野です。給与を得ても、物を売っても買っても、様々な税に関わらざるをえません。税がかかるということが、人々の行動に影響を与えることもしばしばみられる現象です。個人でも、税金を考慮せずに行動していると、思わぬ税を負担しなければならないことがあります。ましてや、大きな取引を行う会社では、税負担を考えずに事業上活動を行うことは、かなり危険だといってもよいでしょう。租税法を知り、税に対する対応や社会制度を考えることは、現代社会を生き抜く上で必ず直面する要素の1つを垣間見ることであり、非常に有益です。 教育面においては、税務署の協力を得て、税務調査や内定調査あるいは税の徴収過程等を模擬的に体験する実習を行っています。大学で学んだことが実際の社会においてどのように動いているのかを知ることのできる絶好の機会となっています。卒業後どのような進路を選ぼうとも、必ずや役に立つことでしょう。 犯罪は一人の者によって実現される場合(単独正犯)だけではありません。犯罪が、複数の者によって実現されるという場合も少なくないのです。法曹を目指す学生は、実務を理解するために、共犯事象の知識をも習得していくべきことになります。また、県庁等に就職し、政策立案といった、法律に携わる仕事をする場合には、単独正犯だけでなく、共犯事象も念頭において、政策立案の検討を行うことが必要不可欠になります。 刑法の授業やゼミでは、何が犯罪でどんな刑罰が科されるのか、また、他人の犯罪に関わると、どんな場合に共犯として処罰されるのか、学ぶことができます。また、学んだ刑法の知識をつかいながら、児童虐待が疑われる事案への対応を模擬体験することも可能です(こども法務実習)。 卒業後は、大学で得た刑法の知識を生かして、警察官や、検察事務官といった法曹を志望する学生もいます。橋本 彩 准教授濱田 新 准教授京都大学法科大学院(法務博士)、同大学法学研究科法政理論専攻博士後期課程 (博士(法学))修了後、信州大学経法学部助教、講師を経て、現職。慶應義塾大学法学部法律学科卒業、同大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学後、信州大学経法学部講師を経て、現職。研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像税務署の協力により行われている税務実習の様子です。上:喫茶店に客として出向くという状況設定にて内定調査を体験。下:徴収の一環である差押えを模擬的に体験。 主に研究しているのは、犯罪の外縁に位置する人々の刑事責任です。対象となる事例は、犯罪を行おうとする人に食べ物や衣服を与えるといった事例や、犯罪を行おうとする人を見たけれども、見て見ぬふりをしたという事例等です。犯罪に関与してしまったこれらの人が、どのような場合に共犯になるのか、研究しています。こども法務実習では松本市役所・長野県児童相談所のご協力をいただき、児童虐待に対応する現場を模擬体験します。主な研究事例

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